先日、ある保険営業の方からこんな話を聞きました。「社長個人の人間ドック代は、さすがに会社では落とせないですよね」。

実はこれ、半分正解で半分不正解です。条件さえ満たせば、社長の人間ドック代もきちんと会社の経費にできます。多くの社長が知らずに自腹を切っている、もったいないポイントのひとつです。

全員一律・会社直接払いが原則

結論から言うと、健康診断や人間ドックの費用は「福利厚生費」として損金にできます。ただし、そのためには守るべきルールがあります。

まず、対象は役員だけ、社員だけといった特定の人に限ってはいけません。原則として、全役員・全従業員が対象になっている必要があります。年齢や勤続年数で受診の有無を分けるのは問題ありませんが、「社長だけ」「特定の役員だけ」という運用は認められません。

もうひとつ重要なのが支払い方法です。会社が医療機関に直接費用を支払う形でなければなりません。社員が一旦立て替えて、後から会社が現金で精算するようなやり方だと、税務上は給与とみなされるリスクが高くなります。領収書と引き換えに会社の口座から医療機関へ振り込む、あるいは請求書払いにする、という流れを徹底しておくと安心です。

社長だけ豪華なコースにすると給与課税

ここで多くの会社がつまずくのが、「社長だけ特別に手厚い人間ドックを受けさせたい」というケースです。

気持ちはよく分かります。会社を背負う社長の健康は、何より優先すべき経営資源です。ですが、社長だけ脳ドックやPET検査まで含んだ数十万円コースを受け、一般社員は基本的な健康診断のみ、という差をつけてしまうと、その差額分は社長個人への給与として課税されてしまいます。

福利厚生費として認められるための大原則は、「特定の人だけを優遇しない」ことです。役職によって受診内容に大きな差をつけると、その時点で福利厚生の枠組みから外れてしまうと考えておいたほうがいいでしょう。

金額は「常識的な範囲」に収める

もうひとつの注意点が金額です。全員一律であっても、1人あたり数十万円もするような高額な人間ドックだと、社会通念上相当な範囲を超えていると判断される可能性があります。

目安としてよく言われるのは、1人あたり数万円程度の一般的な人間ドック費用です。オプション検査を充実させたい場合も、全員に同じ選択肢を用意し、突出した金額にならないよう調整しておくのが無難です。

実務上は、年齢に応じて基本コースに追加検査を付ける、といった設計も可能ですが、その基準もあらかじめ社内規程として明文化しておくと、税務調査の際にも説明がしやすくなります。

規程を整えておくと後々ラク

福利厚生費として処理する以上、「なぜその制度になっているのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。健康診断の実施規程を作り、対象者・実施内容・費用負担のルールを明文化しておけば、社長自身の受診分についても迷いなく経費にできます。

まだ規程がないという会社は、決算期を待たず、次の健康診断のタイミングに合わせて整備しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。