先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「一時的に会社の口座からお金を借りて、住宅ローンの頭金に充てたいんですが、問題ないですよね?」

もちろん会社から社長個人へお金を貸すこと自体は、法律上禁止されているわけではありません。ただし、「無利息」でお金を借りると、税務上思わぬ落とし穴にはまることがあります。

無利息で借りると、利息分がまるごと役員給与に

会社が社長に無利息、あるいは低い利率でお金を貸し付けると、税務署は「本来受け取るべきだった利息」を会社の収益として認定します。これを「認定利息」と呼びます。

たとえば500万円を無利息で借りていた場合、年利にして数%相当の利息収入を、会社側は本来得ていたはずだとみなされ、その分の法人税を追加で納めることになります。

さらに厄介なのはここからです。会社が受け取るはずだった利息を社長が実質的に免除してもらった形になるため、その利息相当額は社長への「給与」とみなされます。給与として扱われれば、当然そこに所得税と住民税がかかってきます。

つまり、無利息の貸付は「会社側の法人税」と「社長個人の所得税」の両方に影響が及ぶ、二重の負担を招くリスクがあるということです。

適正な利率はどう決まるのか

では、いくらの利息を取れば安全なのか。国税庁が毎年公表する「特例基準割合」という利率を目安にするのが一般的です。近年はおおむね年1%台で推移しており、これを下回る利率で貸し付けていると認定利息のリスクが生じます。

会社が銀行から借り入れをしていて、その資金を社長に貸し付けているような場合は、銀行への支払利率と同水準の利率を設定するのが安全です。「その他の場合」であれば特例基準割合を使う、という整理を覚えておくとよいでしょう。

役員貸付金そのものが調査で狙われやすい

利息の計上以前に、そもそも役員貸付金という科目自体が税務調査で真っ先にチェックされるポイントの一つです。

決算書に役員貸付金が計上されていると、調査官は「会社の資金が私的に流用されていないか」「使途不明金の受け皿になっていないか」という視点でまず目を光らせます。金額が大きく、返済実績もなく残高が膨らみ続けているようなケースは、特に心証が悪くなりがちです。

利息をきちんと計上していても、貸付金残高そのものが不自然に大きければ、それだけで調査が長引く原因になります。

一番の対策は「そもそも借りない」体制

利率の設定や利息の計上は、あくまで対症療法です。一番の対策は、会社の資金を社長個人が気軽に借りられない体制を作っておくことだと考えます。

役員報酬を適正な水準に設定し、個人の資金需要は個人の口座や借入で完結させる。どうしても一時的な資金移動が必要になった場合は、金銭消費貸借契約書を交わし、返済計画と利率を明記した上で、期中のうちに返済してしまう。

これだけで、決算書に貸付金残高が残るリスクも、認定利息のリスクも大きく減らせます。

もし現在すでに役員貸付金が残っている場合は、放置せず、早めに顧問税理士と返済スケジュールを相談しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。