先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「会社でリゾート会員権を買おうと思うんですが、福利厚生費にできますよね?」

悪くない発想です。従業員の慰安になり、会社の経費で落とせるなら一石二鳥に見えます。ですが、この発想のまま実行すると、税務調査で痛い目を見ることになりかねません。

結論、全社員が使えなければ福利厚生費にはならない

先に結論を言うと、保養所やリゾート会員権が福利厚生費として認められるのは、全従業員が実際に平等に利用できる実態がある場合に限られます。

社長一家しか使っていない、あるいは役員とその家族ばかりが利用しているような実態であれば、それは福利厚生ではなく、社長個人への給与や役員賞与とみなされます。

給与認定されると何が起きるか。会社側は経費として否認され、法人税が追徴されます。さらに源泉徴収漏れも同時に指摘されるため、加算税・延滞税を含めると想像以上の負担になります。役員賞与とされれば、そもそも損金にすらなりません。

なぜ「実態」がそこまで重視されるのか

福利厚生費の考え方の根っこにあるのは、「特定の人だけが得をする支出は、実質的に給与と同じではないか」という発想です。

全社員が使える食堂や慶弔見舞金は、誰か一人が得をする話ではないので福利厚生費として認められます。一方で、リゾート会員権は使える人数に限りがあり、実際に使うのは経営陣周辺に偏りやすい支出です。だからこそ税務署は、この手の支出を見るとまず「本当に全員が使っているか」をチェックします。

規程を作れば大丈夫、ではない

ここで多くの社長が誤解するのが「利用規程さえ整備すれば通る」という点です。

実際には、規程は最低限の入口にすぎません。規程があっても、実際の利用実績が特定の役員一家に偏っていれば、税務調査官は規程よりも実態を見て判断します。名目上は「全社員対象」と書いてあっても、中身が伴わなければ意味がないのです。

具体的には、次のような記録が求められます。

  • 誰が、いつ、何回利用したかの利用簿
  • 一般社員の利用実績が実際に存在すること
  • 予約方法や案内が全社員に周知されていること

年に一度も一般社員が使っていない保養所は、規程がどれだけ立派でも「絵に描いた餅」と判断されるリスクが高いと考えられます。

現実的な運用のヒント

中小企業で全社員が公平に使える保養所を維持するのは、正直なところハードルが高い施策です。従業員数が少ない会社ほど、結果的に役員家族の利用比率が上がりやすく、否認リスクも上がります。

代わりに検討したいのが、外部の福利厚生サービス(法人会員制の宿泊補助など)の活用です。自社で施設を持たない分、利用実績の公平性を証明しやすく、税務上のリスクも下げられます。

どうしても自社保養所を持ちたい場合は、利用案内を社内報や社内SNSで定期的に周知し、実際に一般社員の利用実績を積み重ねておくことをおすすめします。

まだ保養所やリゾート会員権の利用規程を整備していない、あるいは規程はあっても利用実績を記録していないという方は、今期のうちに運用ルールを見直しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。