先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。

「社宅にすると得だと聞くが、実際どれくらい変わるんだ」

自宅の家賃を毎月自分の財布から払っている社長ほど、この質問への答えを聞くと驚かれます。今日はその仕組みを、できるだけ具体的にお話しします。

家賃の大部分が会社の経費になる

結論から言うと、法人が物件を借り上げて役員社宅にすれば、家賃の相当部分を会社の損金にできます。

仕組みはシンプルです。会社が大家さんと賃貸借契約を結び、家賃を会社の口座から支払います。その上で、役員本人は「賃貸料相当額」と呼ばれる金額だけを会社に払い戻す。この差額が会社の経費として積み上がっていきます。

個人で家賃を払っている限り、それは単なる生活費です。経費にはなりません。ところが法人契約に切り替えるだけで、同じ家賃の大部分が損金に変わる。この違いを知らずに個人契約のまま何年も過ごしている社長は、実はかなり多いです。

本人負担はどれくらいで済むのか

「では自分の負担はいくらになるのか」というのが次に気になるところだと思います。

小規模な住宅であれば、目安として家賃の1〜2割程度の本人負担で済むケースが多いです。たとえば家賃30万円のマンションなら、本人負担は3万〜6万円程度、残りの24万〜27万円ほどを会社の経費にできる計算になります。

この「賃貸料相当額」は、物件の固定資産税評価額や床面積を基に国税庁の計算式で算出されるもので、実勢家賃よりかなり低く出るのが一般的です。だからこそ、本人負担が家賃の1〜2割という水準に落ち着くケースが目立ちます。

もちろんこれは小規模住宅の話です。床面積が広い、いわゆる豪華社宅に該当する物件では、この優遇計算が使えず本人負担が跳ね上がります。ここは物件選びの段階で必ず確認しておきたいポイントです。

注意しておきたい落とし穴

ここで気をつけたいのが、契約の「順番」です。

すでに個人名義で契約している賃貸物件を、後から法人契約に巻き直そうとすると、大家さんとの再契約や敷金の精算など、思った以上に手間がかかることがあります。新しく物件を借りる、あるいは契約更新のタイミングで法人名義に切り替えるのが、実務上いちばんスムーズです。

また、賃貸料相当額の計算を怠って本人負担をゼロにしてしまうと、家賃全額が給与として扱われ、思わぬ課税を招きます。社宅制度は「本人からきちんと相当額を徴収している」ことが前提の仕組みだという点は、忘れずに押さえておいてください。

住宅ローンで購入したマイホームに住んでいる社長の場合は、社宅化はできません。あくまで賃貸物件が対象になる制度です。持ち家の社長は、次の住み替えのタイミングで検討してみる価値があります。

まだ自宅を個人契約のまま借りているなら、次の更新月をゴールに、一度顧問税理士と物件情報を持ち寄って試算してみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。