先日、飲食店を5店舗経営している社長から、こんな連絡が届きました。「突然、税務署から調査の通知が来たんですが、何か問題があったんでしょうか……」
結果的に大きな問題なく終わりましたが、話を聞いていると「あ、これは狙われやすいパターンだな」と思う要素がいくつも重なっていました。
税務調査は、決してランダムに選ばれているわけではありません。国税局には膨大な申告データが蓄積されており、「この会社は調べる価値がある」と判断されたところに調査が入ります。では、どんな会社がマークされやすいのか。今日はその7つのポイントをお伝えします。
「選ばれる会社」には共通点がある
全国には約300万社以上の法人があり、年間に税務調査が入るのはおよそ3〜4万社です。確率でいえば1〜2%前後ですが、この数字は会社によって大きく変わります。
特定の条件に当てはまると、その確率が何倍にも跳ね上がります。「うちには縁のない話」と思っていた社長が、翌年に通知を受けることも珍しくありません。
調査官がマークする7つのシグナル
1位:同業他社より経費率が10%以上高い申告
最も調査官が注目するのが、これです。業種ごとに「だいたいこのくらいの経費率」という相場感が国税局のデータに蓄積されています。
たとえば、同業他社の交際費が売上の1%前後なのに、ある会社だけ5%計上していれば当然マークされます。役員報酬が突出して高い場合も同様です。「それは本当に事業目的の支出か」「報酬として適正な水準か」という視点で徹底的に見られます。
2位:売上が前年比30%以上の急増・急減
業績の大きな変動は、調査官に「何かあった?」と思わせます。売上が急増した場合は「計上漏れがないか」、急減した場合は「経費の水増しや売上の除外がないか」を疑われます。
コロナ禍で売上が急変した時期に調査件数が増えた背景にも、この理由があります。変動には合理的な説明と裏付け資料が必要です。
3位:現金売上が多い業種
飲食・建設・小売・美容など、現金でやり取りが多い業種は調査確率が高い傾向にあります。通帳に記録が残らない売上については「本当にすべて申告されているか」と疑われやすいからです。
キャッシュレス化が進んだ今でも、現金比率が高い業種への目線は厳しいままです。
4位:申告書に数字の不整合がある
細かいようで、これが入り口になることがあります。消費税の申告と法人税の申告で売上額が一致しない、前期と当期で勘定科目の整理に一貫性がないといった「ズレ」は、調査のきっかけになります。
5位:仮払金・役員貸付金が膨らんでいる
貸借対照表に「仮払金」や「役員への貸付金」が何百万・何千万と積み上がっている会社は、「何に使ったのか」と問われます。実態が見えにくい科目は、調査官の興味を引きやすい。
6位:赤字続きなのに役員報酬が高水準
会社として3期連続赤字なのに、役員報酬が毎年高水準というケースは「法人を節税目的で使っているのでは」と見られます。報酬の合理性について、明確な説明ができる状態にしておく必要があります。
7位:過去に修正申告や期限後申告の履歴がある
一度でも修正申告を出したり、期限を過ぎて申告した履歴があると、「また問題があるかもしれない」という目で見られます。過去の申告履歴は税務署内にデータとして残っていると考えておいてください。
大事なのは「当てはまること」ではなく「説明できるか」
正直なところ、このリストを見て「ひとつも当てはまらない」という会社は少ないと思います。
大切なのは、当てはまること自体よりも「当てはまっていると認識しているか」「指摘されたときに説明できる資料が揃っているか」です。調査が入っても、正当な根拠がある経費であれば否認されません。問題なのは、何も準備しないまま申告しているケースです。
今すぐ顧問税理士に確認すること
この7つを見て「うちはどうだろう」と気になった社長は、次回の顧問税理士との打ち合わせで確認してみてください。「同業他社と比べて経費率に問題はないか」「最近の売上変動について説明できる資料はあるか」——この2点だけでも確認するだけで、リスクの輪郭が見えてきます。
税務調査は、準備している会社とそうでない会社とで、結果が大きく変わります。「いつ来ても大丈夫」という状態を日頃から作っておくことが、最大の節税対策でもあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。