先日、年商3億の製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「ふるさと納税、毎年ちゃんとやってるんですよ。でも決算前に税理士に確認してもらったら、『もっと寄附できたのに』って言われてしまって…」

話を聞くと、3年間にわたって本来の控除上限の半分以下しか活用できていなかったことが発覚。金額にすると、ざっと150万円以上の節税機会を逃していた計算になります。

「知らなかった」では済まない話ですが、実はこれ、社長あるあるなんです。一生懸命やっているつもりなのに、やり方がちょっとズレていて損をしている。今日はそんなケースの中でも特に多い3つのミスをお伝えします。

ワンストップ特例で「完了」と思っていませんか?

3番目のミスは、ワンストップ特例の申請書を送って、それで手続き完了だと思ってしまうパターンです。

ワンストップ特例は「確定申告をしなくてもふるさと納税の控除が受けられる」便利な制度ですが、これはあくまでも確定申告が不要なサラリーマン向けの仕組みです。社長や役員の方は、役員報酬の源泉徴収とは別に、事業所得の確定申告が義務になっていますよね。

確定申告をする人がワンストップ特例を申請しても、その効力はなくなってしまいます。確定申告で改めて「寄附金控除」として申告しなければ、控除はゼロ。せっかく寄附したのに節税効果がまったく得られないというケースが毎年後を絶ちません。

ご自身がワンストップ特例だけで処理していた年があれば、修正申告で取り戻せる場合もありますので、一度税理士に確認してみることをおすすめします。

役員報酬を変えた年こそ、計算をやり直す

2番目のミスは、役員報酬を変更した年に上限額の計算を更新し忘れるパターンです。

ふるさと納税の控除上限額は、その年の所得をもとに計算されます。たとえば役員報酬を月40万円から月60万円に引き上げたなら、年収ベースで240万円の増加。控除上限も大幅に上がります。

ところが「去年は○○万円くらいだったから今年もだいたい同じ」と前年の数字を使い回していると、数十万円単位で寄附枠を余らせてしまいます。逆に役員報酬を下げた年は上限が下がりますから、計算を怠ると自己負担2,000円を超えてしまうリスクもあります。

役員報酬を変えた年は必ず再計算。これを絶対のルールにしてください。決算期の前に今期の役員報酬総額が固まったタイミングで税理士に確認するのが一番確実です。

「年収」で計算しているなら、今すぐやめてほしい

1番目のミスが、最も多く、かつ最も損をしているケースです。それは、年収(額面)でふるさと納税の上限を計算してしまうことです。

控除上限の計算に使うのは「課税所得」、つまり年収から給与所得控除・社会保険料控除・扶養控除などを差し引いた後の金額です。年収2,000万円の社長であっても、課税所得は1,200〜1,400万円程度になることが多い。

ネットのシミュレーションツールに「年収2,000万円」と入力したとき、そのツールが何の数値を求めているのか——額面年収なのか課税所得なのか——を確認せずに使っていると、計算が大きくずれます。正しく課税所得を入力し直すと「実はあと40万〜50万円分、寄附できる余地があった」という社長は珍しくありません。

年収ベースの概算は、あくまでざっくりした目安に過ぎません。実際の上限額は、確定申告前に税理士と一緒に「今年の課税所得見込み」を試算したうえで決めるのが王道です。


3つのミスに共通しているのは、「なんとなくやっている」という点です。ふるさと納税は正しく使えば年間数十万〜50万円規模の節税になる制度。社長クラスの所得であれば、その恩恵はサラリーマンの比ではありません。

年末が近づいてきたら、一度税理士に「今年の課税所得の見込みと、ふるさと納税の上限額」を確認してみてください。それだけで、来年の確定申告が大きく変わることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。