先日、顧問先の社長からこんな連絡がありました。「今年の賞与、ちゃんと出したのに手元に残ったのが思ったより全然少なくて……」。年商3億円の建設会社を経営する50代の社長で、自分への賞与を500万円に設定したつもりが、実際の手取りはざっくり300万円を切っていたというのです。

「なんでこんなに取られるんですか?」という質問は、毎年この季節になると耳にします。答えはシンプルで、役員賞与には通常の給与とは違う「税の三重苦」があるからです。

役員賞与が「最も割の悪い報酬」と言われる理由

役員賞与には、大きく3つの壁があります。

まず会社側で、法人税の計算から除外されるという問題があります。通常の役員報酬(月給)は損金として会社の利益から差し引けますが、届出なしの役員賞与は損金不算入、つまり法人税の対象になったまま。会社として利益が出ているとみなされ、法人税等(実効税率約30〜34%)が課かります。

次に社長個人への課税。賞与は給与所得として所得税と住民税の対象です。年収が一定以上の社長なら、所得税の最高税率は45%、住民税は一律10%。合計すると最大55%が税金で消えます。

さらに社会保険料。賞与には健康保険・厚生年金の保険料もかかります。会社と個人でそれぞれ負担するため、実質的なコストはさらに膨らみます。

これらが重なると、手取りが支給額の6割を切るケースも珍しくありません。500万円の賞与で手元に残るのが280〜300万円というのは、極端な話ではないのです。

「事前確定届出給与」という、たった1枚の解決策

では、どうすれば賞与に節税効果を持たせられるのか。

答えは「事前確定届出給与」という仕組みです。名前は難しそうですが、やることはシンプル。「○月○日に、○○円を支給します」という内容を、定時株主総会から1ヶ月以内(または事業年度開始から4ヶ月以内の早い方)に税務署へ届け出るだけです。

この届出をしておけば、役員賞与が損金算入として認められます。法人税の計算から差し引けるので、実効税率30%なら500万円の賞与で約150万円の法人税が減る計算になります。個人への所得税・住民税は変わりませんが、会社側の節税分だけでも年間のトータルはかなり違ってきます。

届出のポイントと、絶対に避けるべきミス

この制度を使う上で、押さえておきたいことが2点あります。

1つ目は、期限内の届出。定時株主総会から1ヶ月というのは意外と短い。総会が終わったら、できるだけ早く税理士に連絡するのが鉄則です。

2つ目が、届出通りに払うこと。これが最も重要な注意点です。届け出た金額と実際に支払った金額が1円でも違うと、その賞与は全額損金不算入になります。「業績が落ちたから少し減らした」も、「もう少し出したいから増やした」も、全てアウト。届出は一度提出したら変更できないと思って、慎重に金額を決める必要があります。

今期の賞与、まだ間に合う可能性があります

事前確定届出給与は、手続き自体はそれほど複雑ではありません。ただ、届出のタイミングと金額の決め方には注意が必要で、一度ミスをすると修正がきかないのが怖いところです。

「今期の決算が良かったから、賞与を出したい」と思ったとき、定時株主総会後であればまだ間に合う可能性があります。逆に、何となく後回しにして期限を過ぎると、節税の機会を丸ごと失うことになります。

もし今まで届出なしで役員賞与を出していたなら、今期から制度を活用することで会社・個人ともに手取りが増える可能性は十分あります。顧問税理士に「事前確定届出給与の届出、今期どうしましょうか」と一言相談してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。