先日、ある社長からこんな言葉を聞きました。
「節税?税理士に全部お任せしてるから、うちは大丈夫ですよ」
年商3億円、ひとり社長として10年以上事業を続けてきた方です。でも話を聞いていくと、ある共済制度にまったく加入していないことがわかりました。そのままでいたら、毎年数十万円をただ捨て続けていたことになります。
「知らなかった」では済まない金額が、毎年静かに消えていく。これが、節税を後回しにしている社長の現実です。
3つ使わないだけで年100万円以上の損失になる
結論から言います。
小規模企業共済・経営セーフティ共済・役員社宅——この3つをまったく活用していない社長は、年間で100万円以上の節税チャンスを逃している可能性があります。
利益が出ているのに対策ゼロという状態は、もらえる給付金を申請せずに放置しているのと同じです。税制は「知っている人が得をする世界」です。知らないでいることが、一番高い税金になるのです。
小規模企業共済だけで年25万円が手元に残る
まず「小規模企業共済」から見ていきましょう。
中小企業経営者や個人事業主が加入できるこの制度、月最大7万円・年間84万円まで積み立てができます。そしてこの84万円が全額、所得控除の対象になります。
実効税率30%で計算すると、それだけで年間約25万円の節税です。10年続ければ250万円。しかも積み立てたお金は廃業・退職時に退職金として受け取れるため、老後の備えにもなります。
メリットが多すぎて「なぜ入らないのか」と思うほどですが、意外と未加入の社長が多い。その理由のひとつは「自分が加入できるか知らない」こと。法人の役員も条件次第で加入できますので、まずは中小機構の窓口で確認してみてください。
経営セーフティ共済で法人税を年60万円削る
次は「経営セーフティ共済」(中小企業倒産防止共済)です。
取引先の倒産時に最大8,000万円まで無利子で借入できる保険的な制度ですが、節税面でも非常に優秀です。月最大20万円・年間240万円まで掛金を支払え、その全額が損金(経費)として計上できます。
利益を240万円圧縮できる、ということです。法人税率25%なら年間60万円の節税になります。しかも解約すれば掛金の95〜100%が戻ってくる仕組みなので、実質「節税しながら貯める」効果があります。
ただし注意点が一つ。加入後1年以内に解約すると返戻金がゼロになります。短期的な節税目的で飛びつかず、顧問税理士と相談しながら活用タイミングを見極めることが大切です。
役員社宅で手取りを増やしながら経費にする
3つ目は「役員社宅」の活用です。
会社が賃貸物件を借り上げて役員に貸し付ける仕組みで、賃料のうち法定計算式で算出した「賃料相当額」を役員が負担し、残りは会社の損金になります。
たとえば月25万円の家賃のうち、役員負担が3〜5万円、残りの20万円超が法人経費になるケースもあります。役員報酬を上げて手取りを増やすより、社宅として現物給与化したほうが所得税・社会保険料の節約になることも多い。都市部の高家賃エリアでは、この差が年間50〜100万円規模になることもあります。
「税理士に任せているから安心」が一番危ない
ここで正直に言います。
税理士が必ずしも節税を提案してくれるわけではありません。決算書を作り申告書を出すのが本来の業務です。節税提案はサービスとしてやってくれる税理士もいれば、聞かないと動かない税理士もいます。
特に小規模企業共済は「個人として加入する制度」なので、法人の顧問税理士が自発的に提案しにくいという事情もあります。自分から「この制度、私は使えますか?」と聞かないと、一生スルーされることもあるのです。
節税の第一歩は「制度を知ること」です。知らないままでいることが、最大のコストです。
今期中に一つだけ動いてみてください
これら3つの制度は、どれも今すぐ始められるものです。
来期から動こうと思っていると、今期の利益分がそのまま税金になります。小規模企業共済は加入月から控除が始まりますので、早く動くほど得です。
まずは「自分は小規模企業共済に入れるか」を顧問税理士か中小機構の窓口で確認してみてください。それだけで、年間25万円のリターンが手に入る可能性があります。制度を知っているかどうかの差が、10年後には数百万円の差になって返ってきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。