「税務調査って、うちみたいな小さい会社にも来るんですか?」
ある社長から、こんな質問を受けたことがあります。年商2億円の製造業、社員数10名ほどの会社です。「ちゃんとやってるから大丈夫だろう」と思っていたところに調査の通知が届き、初めて真剣に考えはじめたと言っていました。
年間3%、されど5年で15%
法人が税務調査を受ける確率は、年間でおよそ3%と言われています。
「3%なら低いじゃないか」と感じる方も多いと思います。1年だけ見ればそうかもしれません。ところが、これが5年続くとどうなるか。累積するとおよそ15%になります。つまり、6〜7社に1社は5年以内に税務調査を経験する計算です。
10年、15年と事業を続けていれば、さらに確率は上がります。税務調査は「運が悪い会社が受けるもの」ではなく、「長く続けていれば、いつか来るもの」と考えておく方が現実的です。
狙われやすい会社には、共通点がある
税務署は膨大な申告書データを分析して、調査先を選んでいます。当然、リスクが高いと判断されやすいパターンというものがあります。
まず、現金取引が多い業種です。飲食店、美容室、小売業など、現金の動きが複雑な業種は「売上の一部が漏れているのでは」という視点で見られやすい傾向があります。同業種の平均と比べて利益率が低すぎる場合も、注意が必要です。
次に、交際費が突出して多い会社。申告書には交際費の金額が記載されていますが、業種平均から大きくかけ離れていると目を引きます。「本当に全部仕事の飲食なの?」という疑念を持たれるわけです。
そして、売上や利益が急激に変動した期も要注意です。昨年売上3億だったのに今期は1億5千万に落ちている、というケースは「何かあったのでは」と見られやすい。正当な理由があれば問題ありませんが、それを説明できる資料を手元に置いておく必要があります。
調査が来てから慌てても、もう遅い
税務調査の通知は、多くの場合、調査日の1〜2週間前に来ます。そこから過去数年分の帳簿を掘り起こして整理する、というのは現実的に不可能です。
調査が入ると、担当者は過去2〜3年分の帳簿・領収書・請求書・銀行通帳などを確認していきます。「このレシートは何の経費ですか?」「この現金入金は何の収入ですか?」という質問が飛んできて、一つ一つ答えなければなりません。
普段から整理されていれば何でもない質問でも、まとめていない状態では答えに詰まります。そして答えに詰まると、調査担当者に「ここは怪しい」という印象を与えてしまいます。疑念を持たれた箇所は、さらに深く掘り下げられることになります。
今日から始められる、3つの準備
むずかしいことはいりません。
まず、領収書・レシートの管理ルールを決めることです。日付・金額・用途をセットで保存する習慣をつけましょう。スマートフォンで撮影してクラウドに保存するだけでも、紛失リスクは大きく下がります。
次に、現金取引の記録を日次で残すこと。現金売上が多い業種は特に、日次での記録と月次の突合を習慣化しておいてください。週に一度まとめてやろうとすると、記憶は案外あいまいなものです。
そして、交際費の「使途」を残すこと。誰と、何の目的で、どこへ行ったのか。メモ書き1行でいいので、領収書の裏や経費精算の備考欄に書いておくだけで、いざというときの説明力がまったく変わります。
税務調査は、正しく申告していれば追徴課税にはなりません。怖いのは「証拠がない」「説明できない」という状態です。帳簿整備は、節税よりも先に手をつけるべき、会社の基礎体力です。
「うちの管理、少し心配かも」と感じたなら、決算を待たずに今の時点で一度見直すことをおすすめします。税理士と一緒に確認するだけで、万が一のときの備えが大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。