先日、飲食業を営む社長から連絡が来ました。「税務調査が入りそうで不安なんですが、どう準備すればいいですか?」という内容でした。
話を聞いてみると、売上は年間3億円ほどあるのですが、ここ2年ほど経費がかなり増えていて利益はほぼゼロに近い状態が続いているとのこと。
正直に言えば、この状況は税務署からすると「調査に行く理由」がいくつも重なっています。今回は、税務調査で実際に狙われやすい社長のパターンを3つお伝えします。心当たりがある方は、ぜひ早めに手を打ってください。
税務調査は「ランダム」じゃない
よく勘違いされているのですが、税務調査は完全にランダムで実施されているわけではありません。税務署はKSKシステム(国税総合管理システム)を使って、全国の申告データを突き合わせています。業種ごとの平均的な利益率や経費率を把握した上で、「この申告は数字がおかしい」と判断した法人に優先的に調査を入れる仕組みです。
つまり、目立つ申告をしている会社ほど調査確率が上がるということ。では、何が「目立つ」のか——それを知っておくだけで、準備がまったく変わってきます。
第3位:現金収入が多い業種の社長
飲食店や小売業、美容室などの現金商売をしている社長は、それだけで調査対象になりやすい業種に属しています。
理由はシンプルで、現金収入は帳簿に載せない——いわゆる売上除外が比較的容易なため、税務署の目が向きやすいのです。現金商売の法人は一般法人と比べて調査対象率が約3倍になるケースもあると言われています。
悪気がなくても、レジ管理が曖昧だったり、現金の動きの記録が雑だったりすると、それだけで「確認しに行く理由」になってしまいます。現金収入がある会社は、日々の入出金の記録を丁寧に残しておくことが第一歩です。
第2位:同業他社より経費率が飛び抜けて高い社長
「節税のために経費をしっかり使っている」という経営者は多いのですが、同業の平均と比べて交際費や外注費が突出して高い場合、架空経費を疑われることがあります。
たとえば、同じ建設業の会社が平均で売上の15%ほどの外注費を計上しているのに、ある会社だけが35%を超えているとすると、税務署はこう考えます。「この差額はどこから来ているのか」と。
こうした架空経費の疑いで調査が入った場合、追徴税額の平均は200万円を超えることもあります。経費として落とすこと自体は問題ありませんが、根拠となる書類——請求書、契約書、振込記録——をきちんと保管しておくことが重要です。金額が大きいほど、証拠の厚みも求められます。
第1位:売上は伸びているのに、利益が増えない社長
最も税務署が注目するのが、この「利益率の急変」です。
たとえば、前期まで売上5億円・利益率10%で推移していた会社が、今期は売上が7億円に増えたのに利益率が2%に落ちているとします。売上が伸びているのに利益が出ないというのは、構造的に不自然です。税務署の目線では、「増えた売上をどこかに移しているのでは?」という疑念に直結します。
設備投資や人件費の増加など、正当な理由があれば問題ありません。ただそれを説明するための資料——稟議書、雇用契約書、設備の見積もりや納品書——が手元になければ、調査官を納得させるのは難しくなります。
利益率が大きく変わった事業年度があるなら、その理由を言語化して書類で裏付けておく。これが最大の対策です。
「調査が来てから」では遅い
税務調査の連絡が来るのは、たいてい突然です。「2〜3週間後に伺います」という通知が届いてから慌てて書類を整えようとしても、間に合わないことが多い。
特に今回挙げた3つのパターン——現金商売・突出した経費率・利益率の急変——のどれかに当てはまるなら、今すぐ顧問税理士に現状を共有して、調査対策の相談をしておくことをおすすめします。
税務調査は「狙われにくい会社」になることが、最も効果的な節税の一つでもあります。決算が終わったこのタイミングで、一度自社の数字を税理士と一緒に見直してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。