先日、ある飲食チェーンを経営している社長から相談を受けました。「去年、売上が一気に伸びたんですが、それって税務調査に来やすくなりますか?」という内容でした。

結論から言うと、「来やすくなる条件の一つには当てはまる」です。ただ、税務調査は決してランダムに行われているわけではありません。税務署はコンピュータによるデータ解析と調査官の経験則を組み合わせて、「この会社は調べた方がいい」と判断する企業をある程度絞り込んでいます。

そして、調査対象に選ばれやすい会社には、共通したパターンがあります。

売上の急増・急減が大きいほど目立つ

税務署がまず注目するのは、前年比での売上の変動幅です。20〜30%を超えるような急増・急減があると、それだけで「異常値」として解析に引っかかりやすくなります。

売上が急増した年は「経費を水増ししているのでは」と疑われ、逆に急減した年は「売上を隠しているのでは」と疑われる。どちらに動いても、変動が大きいほど調査の俎上に載りやすいのです。

成長中の会社や、コロナ禍・物価高騰の影響を受けた業界は特に注意が必要です。数字の変動に合理的な理由があれば問題はありませんが、「その理由を証明できる書類が手元にあるか」を事前に確認しておくことが大切です。契約書・議事録・市場調査資料など、変動の背景を説明できる資料をセットで保管しておきましょう。

業界平均より利益率が極端に低い

次に問題になるのが、同業他社と比べて利益率が著しく低いケースです。

たとえば、同規模の飲食店の平均営業利益率が5〜7%程度のところ、ある店舗が1〜2%しか出ていないとすると、「経費を過剰に計上しているのでは?」という目で見られます。税務署は業種別の財務データを豊富に保有しており、業界平均からの乖離を精度よく検知できます。

重要なのは、「利益が少ないこと」自体が問題なのではなく、「なぜ少ないのか」を説明できないことが問題だということです。設備投資や人件費増加など合理的な理由があるなら、それを裏付ける資料とセットで管理しておく習慣をつけましょう。決算前に自社の利益率を業種平均と比較するだけで、リスクのセルフチェックができます。

現金売上が多い業種は調査頻度が約3倍

これが3つの中でも特にリスクが高い特徴です。飲食・小売・医療・士業など、現金での取引が多い業種は、そうでない業種と比べて税務調査の実務上の頻度が3倍近いとも言われています。

現金は電子記録が残りにくく、売上の一部を申告から漏らすことが物理的に可能です。税務署はそのことをよく知っており、過去の調査実績からも現金商売での不正申告件数が多いことを把握しています。結果として、現金売上比率の高い業種はデフォルトで「リスク度が高い」カテゴリに分類されます。

レジのデータや売上日報など、現金取引を正確にトレースできる記録を日常的に残すことが、最大の防御策になります。

リスクを下げる2つの基本対策

3つの特徴が重なるほど調査リスクは高まりますが、対策自体はシンプルです。

第一は、経費に根拠を持たせることです。領収書を保管するのは当然として、「何のために使ったか」「なぜ業務に必要だったか」を議事録・契約書・メモ等で説明できる状態にしておく。これが基本中の基本です。税務調査官が最も疑うのは、「根拠のない高額経費」です。

第二は、業種平均と自社の数字を定期的に比較することです。決算前に顧問税理士と一緒に「うちの利益率は業界平均と比べてどうか」を確認するだけで、リスクの予兆を早期につかめます。乖離が大きいときは事前に説明資料を準備しておきましょう。

税務調査は「来てから慌てる」ではなく、「来ても困らない状態を日頃から保つ」のが正解です。今期の決算を振り返るタイミングで、ぜひ一度、顧問税理士と一緒に自社のリスク度を棚卸しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。