先日、こんな話を聞きました。年商2億円の建設業の社長が、税務調査を受けて120万円を追徴されたというのです。「うちはちゃんとやってきた」という自信があったのに、3日間の調査が終わってみれば、まさかの金額が並んでいた。
原因は金額の不正ではありませんでした。領収書の用途メモがない。飲食費の参加者記録が曖昧。帳簿と通帳の残高が微妙にずれている。そういった「証憑の不備」の積み重ねが、100万円を超える追徴に化けたわけです。
税務調査は5年に1回、必ずやってくる
法人の税務調査は、平均すると5年に1回の頻度で行われます。「うちは小さいから来ない」というのは思い込みで、中小企業や個人事業主も十分に対象になります。
問題なのは、通知から調査開始まで1〜2週間しかないことです。その短期間で「4年前の領収書の用途」を思い出そうとしても、まず無理です。「あのときちゃんとメモしておけばよかった」という後悔は、調査が終わったあとにしか訪れません。
追徴の原因で最も多いのは、証憑の不備と説明できない出金の2つです。この2点さえ抑えておけば、大半のリスクは下げられます。
なぜ「ちゃんとやってきた」のに追徴されるのか
税務署が問題にするのは「金額の大きさ」だけではありません。「このお金は何のために使ったのか」を説明できないことが、一番の問題です。
飲食費を例にとると、領収書があっても「誰と、何の目的で食事をしたか」が記録されていなければ、経費として認められないケースがあります。「取引先との打ち合わせ」という曖昧なメモだけでは不十分で、具体的な会社名・参加者名・人数・目的が必要です。
「自分はそうやっているつもりだった」という認識と、税務署の基準にはギャップがあることが多い。だから「ちゃんとやってきたのに追徴された」という話が出てくるのです。
今すぐできる5つの準備
難しい話ではありません。「知っているかどうか」の差が、いざというときの100万円の差になります。
① 領収書には用途メモを書く
領収書をもらったその場で、何のための支出かを裏に書く習慣をつけましょう。「A社打ち合わせ後の食事」「事務所の備品」など1〜2行で十分です。数ヶ月後に見返しても状況が思い出せるレベルの情報があれば、説明に困りません。
② 飲食費は5項目を記録する
飲食費は税務署が特に厳しく確認するポイントです。「日時・店名・金額・参加者(会社名と氏名)・目的」の5項目を記録してください。スマホのメモでも、レシートの余白への書き込みでも構いません。記録さえあれば、経費として認められる可能性は大幅に上がります。
③ 役員貸付は書面に根拠を残す
社長が会社からお金を借りている「役員貸付」は、調査で必ず確認されます。取締役会議事録や金銭消費貸借契約書がなければ、「役員報酬の隠れた支払い」と見なされるリスクがあります。借入れの事実があるなら、必ず書面で残しておいてください。
④ 帳簿と通帳の残高を月1回突合する
帳簿上の残高と実際の口座残高が合っていない会社は、意外に多いです。差額が「どこかで出たお金」として問題になることがあります。月1回、残高を突合する習慣をつけるだけで、このリスクはほぼゼロにできます。
⑤ 不明出金をゼロに近づける
通帳を見ると「この引き落とし、何だっけ?」という項目が積み重なっている会社があります。調査員はまさにそこを突いてきます。定期的に通帳を確認し、説明できない出金を洗い出しておきましょう。
準備ゼロだと、重加算税35%が乗ってくる
通常の延滞税や過少申告加算税に加えて、意図的な隠蔽や仮装があると判断された場合は、重加算税として35%が上乗せされます。
仮に100万円の追徴が発生すれば、重加算税込みで135万円になります。「知らなかった」「うっかりしていた」では済まないのが税務調査の現実です。中小企業にとって、キャッシュフローへの打撃は決して小さくありません。
ただ、今回紹介した5つの対策は、どれも今日から始められるものばかりです。
決算前に一度、書類の整備を見直してほしい
税務調査の通知が来てから準備しようとしても、過去の記録を遡ることはできません。日頃から「調査が来ても説明できる状態」を維持することが、最大の防衛策です。
飲食費の記録ルールをまだ定めていない、役員貸付の書面が整っていない、という方は、今期の決算前に一度整理しておくことをおすすめします。顧問税理士と一緒にチェックリストを作るだけで、万が一の場面での安心感がまったく変わってきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。