先日、年商3億円の建設会社を経営する社長と話していたとき、こんな一言が出ました。「役員報酬って、毎年前の年と同じにしてるだけですよ」。

一見、問題なさそうに聞こえますよね。でも、そのひと言の裏には、年間100万円以上の「見えない損失」が隠れていることがあります。

役員報酬の設計は、法人税・所得税・住民税・社会保険料という4つの税目が絡み合う複雑な世界です。ところが多くの社長が、ここに大きな節税チャンスがあることを知らずにいます。今日は、知っているだけで差が出る3つのポイントをお話しします。

3位|役員賞与は「届出なし」だと1円も経費にならない

従業員へのボーナスは当然の経費ですよね。では、役員への賞与はどうでしょうか。

多くの社長が意外に思うのですが、役員賞与は事前に税務署へ届出をしないと、全額が損金不算入になります。つまり法人税の計算上、ゼロ扱いです。知らずに支払っていると、法人税の節税効果をまったく得られないまま賞与を払い続けることになります。

この問題を解決するのが「事前確定届出給与」という制度です。あらかじめ支払日と支払金額を税務署に届け出ることで、役員賞与も損金として認められます。

たとえば年1回200万円の役員賞与を支払う会社で、法人税率が25%の場合、届出があるかないかで50万円の税負担差が生まれます。手続き自体は税理士に依頼すればシンプルに対応できます。

ひとつ大事な注意点があります。届出した金額と実際の支払額がずれると損金算入が認められなくなります。「やっぱり金額を変えよう」が後からできない制度なので、業績を慎重に見極めながら計画することが大切です。

2位|家賃を個人で払い続けているのは大損

「家賃は生活費だから、会社の話じゃない」と思っていませんか。実は、ここに見落とされがちな節税ポイントが眠っています。

仮に社長が個人で家賃月20万円を払っているとします。年間240万円を、税引き後のお金から支払っているわけです。所得税・住民税の実効税率が40%の方なら、手元に240万円残すためには400万円の収入が必要な計算になります。

「役員社宅」の仕組みを使うと、この構図が変わります。会社が物件を借り上げ、国税庁の通達に基づいた計算式で算出した賃料相当額のみを社長が会社に支払うスキームです。

この「賃料相当額」は実際の家賃よりかなり低くなることが多く、差額は会社の経費として処理されます。同じ家に住みながら個人の課税所得が減り、所得税・住民税だけで年間数十万円の差が出るケースは珍しくありません。

ただし、高額物件では「豪華社宅」として通常の計算式が使えないケースがあります。また、固定資産税評価額をもとにした計算が必要なので、実際にどれだけ効果があるかは物件によって異なります。導入前に必ず試算してみてください。

1位|「なんとなく」決めた報酬額が最大の損失源

3つのなかでインパクトが最も大きいのが、報酬額そのものの設定です。

役員報酬の金額は、法人税・所得税・住民税・社会保険料という4つの要素のバランスで最適ラインが決まります。高く設定しすぎると個人の税負担が急増し、低く設定しすぎると法人に利益が残って法人税が増えます。社会保険料は報酬額に連動して上がるため、ここも無視できません。

これらを同時に最適化するのは感覚では難しい作業です。それでも「去年と同じでいい」「ざっくり月80万円で」と決めている社長が、驚くほど多い。

実際に試算してみると、月額報酬を80万円から65万円に変えただけで、法人と個人の税負担合計が年間50〜80万円変わることがあります。手取りがほぼ変わらないにもかかわらず、です。

最適な金額はその年の利益見通し・家族構成・他の所得・社会保険の加入状況などによって毎年変わります。毎期の決算前に、数字を持ち寄って税理士とシミュレーションする習慣をつけると、長期的に見て大きな差が生まれます。

3つを組み合わせると、年100万円の差は現実になる

事前確定届出給与・役員社宅・報酬額の最適化。この3つを整えることで年間100万円以上の節税効果が出るというのは、決して誇張ではありません。

それぞれ単体でも効果はありますが、「法人側の費用を増やしながら、個人の課税所得を下げる」という方向で3つが連動すると、相乗効果が生まれます。

もし「役員報酬を最後に見直したのがいつか覚えていない」「毎年なんとなく決めている」という状況であれば、今期の決算前に一度、顧問税理士に相談してみてください。現状を試算してもらうだけで、節税の余白がどれだけあるか見えてきます。手を打てるのは年に一度の改定タイミングだけ。動けるうちに動くのが、賢い社長の習慣です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。