先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。「毎年60万円の固定資産税を払ってるんだけど、これって何か節税に使えますか?」というものです。
話を聞いてみると、会社で使っている工場の固定資産税を、何年もずっと個人名義の口座から払い続けていたのです。
これは本当にもったいない話でした。支払い方法を少し変えるだけで、年間18〜20万円の節税ができていたのですから。
固定資産税は全額「経費」にできる
会社の事業に使っている不動産の固定資産税は、法人の損金に算入できます。つまり全額を経費として計上できるということです。
法人実効税率は業種や規模によって多少異なりますが、一般的に30〜34%程度。年間60万円の固定資産税を経費にできれば、税額にして18〜20万円の節税になります。
「たかが20万円」と思うかもしれません。でも10年続ければ200万円。会社のキャッシュが手元に残り続けるわけですから、これは無視できない金額です。
ちなみにこれは特別な節税スキームではなく、税法の基本的な仕組みです。会社の事業に必要な支出は損金になる、それだけの話です。
一番多い失敗パターン:「個人払いのまま放置」
固定資産税の節税で最も多い見落としが、社長の個人口座から払い続けているケースです。
自分名義の不動産を会社で使っているオーナー社長の場合、固定資産税の請求書は個人宛に届きます。そのまま個人の口座から引き落とされていると、会社の経費には一切なりません。
支払い口座を変えるだけで節税できるのに、「昔からそうしていた」「よく考えたことがなかった」という理由で見落とされているケースが非常に多いのです。言ってしまえば、毎年自分で自分の首を締めているようなものです。
「法人口座で払えば終わり」ではない
ただし、法人口座から固定資産税を払えばすべて解決かというと、実は少し整理が必要です。
個人名義の不動産を会社が使っている場合、まず「賃貸借契約」を締結することが前提になります。社長個人と会社の間で、書面できちんと契約を結んでいることが税務上の根拠となります。
その上で、固定資産税を法人が負担するなら、賃貸借契約の中でその取り扱いを明確にしておく必要があります。たとえば賃料の中に固定資産税相当分を含めて会社が支払う、という形が一般的です。
「個人と会社の間でも契約書が必要なの?」と驚く方もいますが、必要です。税務調査でも契約書の有無は必ずチェックされます。口頭の約束だけでは認められません。
賃貸借契約を整備するメリット
賃貸借契約をきちんと整備することで、固定資産税の経費化だけでなく、さらに広い節税の可能性が生まれます。
不動産の取り扱いを整理し始めると、その延長線上に修繕費の計上、管理費の整理、場合によっては社宅制度の活用など、芋づる式に節税の余地が見えてくることが多いのです。
「固定資産税だけ」という小さな話が、会社と社長個人のお金の流れを整理する入口になる。そういうケースを何度も見てきました。
今すぐ確認してほしい3点
難しい手続きは必要ありません。まず以下の3点を確認してみてください。
① 誰の口座から払っているか 社長個人の口座から払っているなら、今すぐ見直しのチャンスです。固定資産税の納税通知書を引っ張り出して金額を確認してみてください。
② 賃貸借契約は締結しているか 書面で契約を結ぶことが重要です。内容は税理士や弁護士と相談しながら整備しましょう。
③ 賃料の水準は適切か 賃料が不当に低すぎると、税務上の問題が生じることがあります。近隣の相場を参考に、合理的な水準で設定しましょう。
今まで個人払いのままにしていたなら、次の決算前に顧問税理士と一度確認してみることをおすすめします。「うちの固定資産税、どうなってますか?」と聞くだけで、意外な節税が見つかるかもしれません。過去に払った税金はもう戻ってきませんが、来期からの節税は今日から始められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。