先日、複数の工場と倉庫を持つ製造業の社長から、こんな相談を受けました。「毎年きちんと税金を納めているのに、なんだかキャッシュの出方がおかしい」と。一緒に帳簿を確認していくと、固定資産税の欄で手が止まりました。毎年数百万円規模の納付を続けているにもかかわらず、その計算根拠を一度も確認したことがないと言うのです。
調べてみると、課税標準に見落としがありました。評価替えのタイミングで誤った数字が設定されたまま放置されており、本来より高い金額で税額が計算され続けていたのです。
事業用不動産を持つ社長の3割が、気づかずに払いすぎている
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物の所有者に課税される税金です。事業用不動産を持つ会社にとっては、決して無視できない金額です。
ここで知っておきたいのが、課税標準(評価額の計算の基礎となる数値)は3年に1度しか見直されないという仕組みです。市区町村が3年ごとに一斉に評価替えを行い、その数字をもとに税額が計算されます。
問題は、この評価替えで誤った数字が設定されても、多くの場合そのまま誰にも気づかれず放置されることです。事業用不動産を持つ社長の約30%が、何らかの形で固定資産税を払いすぎているという実態があります。
年間120万円以上の差が生まれることも
課税標準に誤りがあった場合、年間でどのくらいの差が出るのでしょうか。
物件の規模や評価額のズレ幅によりますが、数十万円から、場合によっては120万円以上の差になることもあります。10年単位で考えれば、1,000万円を超える話です。「仕方ない出費」と思っていた金額が、正しく申し立てをすれば取り戻せる可能性があります。
実際に見直しを行った事例では、建物の減価が評価替え時に適切に反映されていなかったケースや、土地の用途区分が誤って登録されていたケースで、大幅な課税標準の修正が認められています。見過ごしていた「当たり前の出費」が、実は取り戻せる税金だったわけです。
5〜6月の通知書が届いた今が確認のタイミング
固定資産税の納税通知書は、毎年5〜6月に届きます。今まさにその封筒が手元にある方も多いのではないでしょうか。
通知書には課税標準額と税額が記載されていますが、数字を眺めているだけでは正しいかどうかは判断できません。重要なのは、固定資産税課税明細書との照合です。これは市区町村の窓口で取得できる書類で、物件ごとの評価額の内訳が細かく確認できます。
「去年と同じ金額だから大丈夫」という思い込みは禁物です。評価替えのタイミングで誤りが発生している場合、その誤った金額が3年間ずっと「正しいベース」として計算され続けます。
期限を過ぎると、次の評価替えまで3年間手が出せない
ここが最も重要なポイントです。課税標準に誤りがあると気づいても、申し立て(審査請求)には期限があります。
納税通知書を受け取ってから原則3ヶ月以内に申し立てを行わなければ、次の評価替えまで見直しを求めることができません。つまり、今年気づいていても申し立て期限を逃せば、最長3年間は誤った金額を払い続けることになるのです。
「いつかやろう」では手遅れになります。通知書が届いた今、このタイミングで確認することが唯一のチャンスです。
まず何をすべきか
最初のステップは、納税通知書と固定資産税課税明細書を手元に揃えることです。そのうえで、不動産税務に詳しい税理士や固定資産評価の専門家に相談するのが確実です。
自力での確認も不可能ではありませんが、評価額の算定基準や減価の計算方法は複雑で、誤りを見つけ出すには専門知識が必要です。とくに複数の事業用不動産を持っている会社、築年数の古い建物や特殊な用途の物件がある会社は、一度プロの目で確認してもらう価値があります。
数十万円の専門家費用が、年間120万円の節税につながることは珍しくありません。費用対効果の観点からも、動く価値は十分にあります。
通知書が届いた今月中に、一度数字を確認してみてください。3年ごとの評価替えで正しく見直されていない可能性は、決して低くないのです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。