「先生、自宅の家賃って、会社の経費にできませんか?」

先日、飲食業を経営する40代の社長からこんな相談を受けました。月30万円の家賃を個人で払っているとのこと。年間360万円が、すべて税引き後の手取りから消えていく計算です。

「それ、役員社宅スキームを使えば、大部分を会社経費にできますよ」と伝えたところ、社長は「そんなことできるんですか!?」と目を丸くしていました。

知っている人には常識なのですが、まだ使っていない社長が本当に多い。今回は、この仕組みをわかりやすくお伝えします。

会社が部屋を借りて、あなたに貸す

仕組みはシンプルです。

今あなたが個人名義で借りている部屋を、会社名義で契約し直す。そして会社が「社宅」としてあなたに貸す。これだけです。

会社が支払う家賃は、全額が損金(経費)として計上されます。月30万円なら、年間360万円が会社の経費になる計算です。これだけで利益が圧縮され、法人税が減ります。

鍵は「賃貸料相当額」という数字

ただし、ただで住んでいいわけではありません。役員も会社に一定の家賃を払う必要があります。これを「賃貸料相当額」といいます。

この金額は、国税庁の通達で計算式が決まっています。固定資産税評価額や床面積などをもとに算出するため、同じ30万円の家賃でも物件によって金額は変わります。

実際のケースでは、月30万円の賃料に対して、賃貸料相当額が月3万円程度になることも珍しくありません。「こんなに少なくていいんですか」と驚く社長が続出する、まさにここがポイントです。

差額27万円、年間324万円が会社の経費になる

整理すると、こういうことです。

  • 会社が払う家賃:月30万円(全額経費)
  • 役員が会社に払う賃貸料:月3万円
  • 差し引き:月27万円 → 年間324万円が実質的な節税ベースに

法人税率が30%なら、約100万円の税負担が軽減されます。個人の可処分所得を増やすことなく、住居費を大幅に軽減できる。経営者にとってこれほど「効率がいい」節税策は、そう多くありません。

「なんとなく安く設定」は税務調査でアウト

ひとつ重要な注意点があります。

賃貸料相当額を根拠なく低く設定するのはNGです。国税庁の計算式に基づいた金額を払わないと、差額が「経済的利益」として役員報酬とみなされ、所得税の課税対象になってしまいます。

節税しようとして逆に課税されるという、皮肉な結果になりかねません。設定の前に必ず税理士に計算を依頼し、根拠のある金額を会社との間で取り決めておくことが大切です。

新築・高級物件ほど「差が開きやすい」

面白いのは、物件の種類によって節税効果が大きく変わることです。

一般的に、新築タワーマンションなど市場家賃が高い一方で固定資産税評価額がまだ低い物件は、賃貸料相当額との差が開きやすい傾向にあります。月50万円の家賃でも、賃貸料相当額が5万円以下になるケースも出てきます。

「どんな物件を社宅にするか」は、節税戦略のひとつとして検討する価値があります。

導入するなら「引越しのタイミング」が狙い目

すでに住んでいる自宅を社宅に切り替えることも理論上は可能ですが、大家との契約変更が必要になる場合もあり、手間がかかることがあります。

スムーズに導入できるのは、引越しを検討しているとき、あるいは法人を新設するタイミングです。最初から会社名義で賃貸契約を結べば、手続きも最小限で済みます。

毎月の家賃をそのまま個人負担し続けているなら、一度「うちの会社で社宅スキームは使えますか?」と顧問税理士に聞いてみてください。物件の条件や会社の状況によって効果は変わりますが、年間数百万円の差がつくこともある、知っているだけで得をする節税策です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。