先日、年商3億円の建設会社を経営する50代の社長と話をしていたとき、こんな言葉が出てきました。
「税金はまだ我慢できる。でも社会保険料だけは、毎年見るたびにため息が出る」
その感覚、よくわかります。法人税は利益が出たときだけかかりますが、社会保険料は赤字でも、売上が落ちた年でも、容赦なく引き落とされます。しかも金額が想像以上に大きい。
月収100万円の社長が毎年払っている「見えないコスト」
役員報酬が月100万円の社長の場合、健康保険と厚生年金を合わせた社会保険料は、本人負担だけで年間約150万円。そこに会社負担分がほぼ同額でかかってきますから、会社全体でみると年間300万円超が社会保険料として出ていくことになります。
これは利益から払う税金ではなく、売上から問答無用で消えていくコストです。しかも役員報酬が上がれば上がるほど、連動して増えていく仕組みになっています。
合法的に削減できる根拠はどこにある?
社会保険料は「標準報酬月額」というテーブルに基づいて計算されます。つまり、毎月の報酬額が変わると、このテーブルの区分が変わり、保険料も変わる。これは制度の構造上、そうなっているだけで、脱法でも何でもありません。
役員報酬の金額を適切な水準に設計し直すことで、標準報酬月額の区分を下げる——これが削減スキームの基本的な考え方です。実際に報酬設計を見直した社長が年間200万円以上の削減に成功したケースは、決して珍しいことではありません。
「報酬を下げる=手取りが減る」では意味がない
ここで多くの社長が引っかかるのが、「報酬を下げたら生活費が足りなくなる」という当然の疑問です。たしかに報酬だけを単純に下げれば、手取りは落ちます。そのまま実行しても本末転倒です。
重要なのは、報酬の「総額」を下げながら「実質的な手取り」を維持する設計です。具体的には、次のような手法を組み合わせます。
- 役員退職金の積立:報酬を下げた分を将来の退職金として会社内に積み立てる。退職金は分離課税で税率が低く、受け取り時の手取りが大幅に有利になる
- 経費の最大活用:社宅制度、出張旅費規程、業務関連の法人カード利用など、役員個人が現金として受け取らずに済む支出を会社経費に切り替える
- 家族への給与分散:実務に関与している配偶者や子に適正報酬を支払うことで、世帯全体の税・社保負担を最適化する
これらを組み合わせると、帳面の上では報酬が下がっていても、日々の生活水準はほとんど変わらない、という状態が実現できます。
「いつ見直すか」がかなり重要
役員報酬は、原則として事業年度の開始から3ヶ月以内にしか変更できません。期中に「やっぱり下げたい」と思っても、基本的に翌期まで待つ必要があります。
つまり、この対策は決算が終わって次の期が始まる「今」が最も動きやすいタイミングです。決算前に慌てて動こうとすると、間に合わないことが多い。
社会保険料の削減は地味に見えますが、年200万円の削減が10年続けば2,000万円の差になります。税率の問題ではなく、「設計」の問題です。今の役員報酬の水準と組み合わせている制度を、一度丁寧に棚卸ししてみることをおすすめします。信頼できる税理士や社労士に現状の設計を確認してもらうだけでも、新しい発見があるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。