先日、ある60代の社長とお話しする機会がありました。息子さんへの事業承継を考えていて、「自社株を渡したいんだけど、税金がものすごくかかるって聞いて……」と深刻な顔をされていたんです。
実は、その「ものすごい税金」を実質ゼロにできる制度が存在します。しかも2027年末という期限付きで、今まさに動くべきタイミングです。
自社株を贈与するといくらかかるのか
自社株を後継者に贈与するとき、何も手を打たなければ贈与税がかかります。
たとえば株式評価額が1億円の会社なら、通常の贈与では4,000〜5,000万円規模の贈与税が発生することも珍しくありません。一括で払える後継者はそうそういませんし、そもそも「税金が払えないから継げない」という理由で、せっかくの会社を手放してしまうケースも実際に起きています。
「税金さえなければ息子に継がせられるのに」という声は、税理士のもとに相談に来る社長からよく聞きます。
贈与税を実質ゼロにできる制度がある
この問題を解決するのが、2018年に創設された事業承継税制の特例措置です。
制度の骨格はシンプルで、「後継者が事業を継ぎ続けている限り、自社株の贈与税・相続税の納税を猶予する」というものです。そして後継者が事業を継続し続けることで、猶予された税金は最終的に免除になります。
評価額1億円の株式を渡しても、数千万円規模の贈与税負担が実質ゼロになる。事業承継を検討している社長にとっては、これ以上ない節税策と言えます。
残り2年、という現実
ここで重要なのが期限です。この特例措置の適用は2027年12月31日が締め切り。今から2年ほどの間に贈与を実行する必要があります。
「まだ2年ある」と感じるかもしれませんが、準備に要する時間を考えると余裕はほとんどありません。事業承継は、決意してすぐに実行できるものではないからです。後継者の意向確認、株式評価の計算、会社の組織整備、顧問銀行との調整——こうした準備だけで1〜2年かかることもざらにあります。
2027年末から逆算すれば、今年中に動き出さなければ間に合わないケースも出てきます。
要件と「継続義務」を知っておく
この制度はメリットが大きい反面、要件が細かく、適用後の管理も必要です。
主な要件としては、贈与者(現社長)が会社の代表者であること、後継者が贈与後に代表者に就任すること、一定の議決権割合(通常は総議決権の2/3以上)を後継者が保有することなどが挙げられます。
また適用後は毎年「継続届出書」を税務署に提出し続ける義務があります。これを1回でも忘れると猶予が取り消され、猶予されていた税金が利子税とともに一気に請求されます。使い始めたら、最後まで丁寧に管理し続けることが必要です。
「知っていたけど間に合わなかった」を防ぐために
この制度、実は「知らなかった」社長よりも、「知っていたけど動けなかった」社長のほうが多いんです。手続きの複雑さと準備の長さが、先送りを生みやすい制度でもあります。
この制度を最大限に活かすには、事業承継に詳しい税理士のサポートが欠かせません。株式評価額の引き下げ策と組み合わせたり、持株会社スキームと絡めたりと、会社の状況に合わせた設計が必要になるからです。
後継者への承継を少しでも考えているなら、「来期に検討しよう」ではなく今すぐ動き出してください。2027年末という期限は、思っているよりずっと早く来ます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。