先月、食品加工業を営む60代の社長から、こんな電話がかかってきました。
「顧問税理士から『2027年がタイムリミット』と言われたんだが、何が終わるんだ?うちはもう手遅れか?」
話を聞いていくと、後継者への自社株の承継をずっと「そのうち」と後回しにしてきたケースでした。事業承継税制の特例措置、ご存知でしょうか。今からでも間に合う可能性はありますが、残された時間は決して多くありません。
自社株を渡すと、本来これだけ税金がかかる
経営者が後継者へ自社株を贈与すると、通常は高額な贈与税がかかります。非上場企業の株式は取引相場がない分、相続税評価額での計算になりますが、業績の良い会社ほど評価額が高くなりがちです。
たとえば、評価額3億円の自社株を贈与すれば、贈与税は1億円を超えることもあります。これが理由で、承継を先延ばしにしている社長は少なくありません。「いつかやらなきゃ」と思いながら、何年も経ってしまうのです。
特例措置なら、その贈与税が100%猶予される
事業承継税制の特例措置は、後継者が自社株を受け取る際の贈与税・相続税を、一定の要件を満たす限り100%猶予してくれる制度です。うまく活用すれば、数千万〜数億円単位の税負担を事実上ゼロで乗り越えられます。
ただしここで必ず押さえておきたいのが、「猶予」であって「免除」ではないという点です。後継者が代表者であり続ける、株式を保持し続けるといった要件を満たしている間は猶予が継続しますが、要件を外れると猶予が取り消され、利子税込みで一括納付を求められることがあります。使う前に、この仕組みをきちんと理解しておくことが大前提です。
2027年12月末が「絶対的な締め切り」
この特例措置には、段階的な期限があります。
特例承継計画の提出期限はすでに2026年3月末で終了しています。「え、もう提出できないの?」と焦った方、少し落ち着いてください。提出済みであれば、次のステップに進めます。
問題は、贈与・相続の実行そのものを2027年12月末までに完了させなければならないという点です。計画を提出して安心していた社長が、まさにここで足をすくわれます。計画を出しただけでは何も始まっていません。株を実際に動かす手続きを、2027年末までに済ませることが絶対条件です。
提出できていない場合は、別の戦略を考える
2026年4月以降に新たに特例承継計画を提出することはできません。つまり、まだ提出していない方にとって、この特例措置はすでに選択肢から外れています。
それでも諦める必要はありません。通常の事業承継税制(一般措置)や、株価評価を事前に引き下げる対策を組み合わせることで、課税負担を大きく軽減できる余地があります。むしろ今のうちに動いておけば、次の相続対策の布石になります。
特例を持っている社長が今すぐやること
特例承継計画を提出済みの社長が、今月中に確認すべきポイントはシンプルです。
- 贈与・相続の実行日を顧問税理士と具体的に決める
- 後継者が代表者要件を現在満たしているか確認する
- 株式の評価額の現状把握と、必要書類の準備を始める
「時間があると思っていたら、気づいたら年末になっていた」というのは、税務の現場では本当によくある話です。2027年12月末は、今から数えると18ヶ月しかありません。
枠は使わなければ消えるだけ
税制の特例というのは、政治的な判断で設けられた時限的なものです。延長される可能性がゼロとは言えませんが、現時点では延長は決まっていません。「延長されるだろう」という期待で動かずにいて、期限切れになってしまうのが最悪のシナリオです。
特例承継計画を提出済みの社長は、今月中に税理士へ一本連絡を入れることを強くおすすめします。「2027年に向けたスケジュールを確認したい」それだけ伝えれば、あとは専門家が整理してくれます。動ける時間は今が一番多い。それだけは確かです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。