先日、年商3億円の建設会社の社長と話していたとき、こんなことをおっしゃっていました。
「毎月のスマホ代とか、勉強のために買った本とか、自分のカードで払ってるんですよね。どうせ少額だし、まあいいかって」
少額、といっても毎月積み重なります。スマホ代1万円、書籍代5千円、オンラインセミナー3万円……。これが12ヶ月続くと、あっという間に50〜60万円になります。
そしてそれが「経費として計上されていない」という事実に、多くの社長が気づいていません。忙しいから後回し、領収書を分けるのが面倒、そんな小さな積み重ねが、年間で大きな「死角」を生んでいるのです。
自腹になりがちな業務費用、実はそのまま経費になる
業務上の必要性がある支出であれば、原則として法人の経費として計上できます。個人のカードで払っていたとしても、その用途が業務に関連していれば問題ありません。
よく「自腹」になりがちなものを具体的に挙げると、業務用スマホの通信費(個人利用分と按分することも可)、仕事に関連する書籍や雑誌・サブスクリプション費用、セミナーや研修・資格取得のための費用、業務で使う文房具やソフトウェアのライセンス料などがあります。
こうした費用は、支払い手段を法人名義に切り替えるだけで経費になります。難しい手続きは一切不要です。ただし「誰が、何のために、いくら支払ったか」という記録をきちんと残しておくことが、後々の税務調査に備えるうえで重要です。
2024年4月から飲食費のルールが大きく変わった
もうひとつ、多くの社長に知っておいてほしい制度変更があります。
法人が飲食費を経費にするとき、これまでは「交際費」として扱われ、資本金1億円以下の中小企業でも費用の50%しか損金にできませんでした。ところが2024年4月以降、1人あたり1万円以下の飲食費は交際費から除外され、全額損金算入できるようになったのです。
改正前の基準は1人5千円以下でしたが、それが一気に倍になりました。ランチミーティングや軽い会食なら、1人1万円以内に収まることも多いはずです。これを正しく処理するだけで、月5〜10万円規模の飲食費が丸ごと損金になります。
ただし、この特例を使うには「参加者の氏名・人数・会食の目的」をレシートや帳簿にメモしておく必要があります。この記録がないと、税務調査で否認されるリスクがあるので注意してください。
毎月10万円の放置が、年120万円超の死角になる
先ほどの話に戻ります。
スマホ・書籍・セミナー・飲食費——これらをざっと合計したとき、「自腹」や「交際費50%」のまま放置している費用が月10万円を超えるケースは決して珍しくありません。
月10万円 × 12ヶ月 = 120万円。さらに法人カードへの切り替えをきっかけに過去分も整理すると、150万円に達することもあります。
では、経費が150万円増えたとき、どれだけ税金が減るのか。実効税率を仮に30%とすると、約45万円の節税効果です。実効税率が34%なら50万円超。これが「経費の穴」の正体です。決して大げさな話ではありません。
解決策はシンプル。法人カードか会社口座に切り替えるだけ
「難しいことはしたくない」という社長にこそ伝えたいのですが、解決策は本当に単純です。
業務で使う支払いを、個人カードや現金ではなく法人カードか会社の銀行口座に集約するだけ。これだけで経費処理の抜け漏れがなくなります。月末に領収書をまとめて経理担当に渡せばいい。それだけの話です。
最近は年会費無料の法人カードも増えています。ポイント還元を考えれば、切り替えにデメリットはほとんどありません。「来月から試してみる」という感覚で始めてみてください。
決算前に一度、「自腹リスト」を棚卸しする
年度途中からでも遅くはありません。まず「今月、自腹で払った業務費用はいくらか」を書き出してみてください。意外と多いことに気づくはずです。
法人カードへの切り替えという仕組みを整えるだけで、手間はほぼゼロのまま節税効果を得られます。それでも「具体的に何が経費になるか」「按分はどう計算するか」という判断は、顧問税理士に確認するのが確実です。
まだ法人カードを作っていないなら、今期中に一枚つくっておくことを強くおすすめします。放置している経費の死角、ぜひこの機会に見直してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。