先日、こんな相談が来ました。「妻を役員にして役員報酬を払っているんですが、これって税務調査で問題になりますか?」

年商1億5千万円の不動産管理会社を経営するBさんです。数年前から奥様に毎月10万円、年間120万円の役員報酬を支払っていました。友人の税理士に勧められてはじめたものの、最近になって「本当に大丈夫なのか」と不安になったと言います。

結論から言えば、3つの条件を満たしていれば問題ありません。でも1つでも欠けると、税務調査で役員報酬を全額否認されるリスクがあります。

3条件で節税効果が変わる

配偶者を法人の役員にして報酬を払うと、法人の課税所得が減ります。たとえば年間120万円の役員報酬を支払えば、法人側では120万円が損金として算入されます。

さらに、個人レベルでも所得が分散されるため、法人税率・個人所得税率ともに下がる可能性があります。うまく設計すれば、年間数十万円規模の節税になることも珍しくありません。

ただし、この節税が認められるかどうかは、以下の3つの条件がすべて揃っているかどうかにかかっています。

条件① 実際に業務を行っていること

名前だけの役員は認められません。

経理の補助、請求書の管理、取引先とのメール対応、SNS運用——何でもいいのですが、法人の業務として説明できる実態が必要です。

「家にいるついでに帳簿を見てもらっている」という状態であっても、業務日報や作業記録が残っていれば証拠になります。名刺を作る、会社のメールアカウントを持つ、こういった対応も実態証明に役立ちます。

税務署が見るのは「本当に役員として働いているか」です。家族だから自動的に認めてもらえる、という甘い見方は通じません。

条件② 株主総会の議事録で役員に選任されていること

役員報酬を払うには、まず「役員」でなければなりません。そのためには、株主総会の議事録に役員として選任されていることが記録されている必要があります。

「妻だから当然役員でしょ」は通りません。議事録を毎年きちんと作成し、法務局への変更登記も済ませておく必要があります。

中小企業では「議事録を作ったことがない」「設立時のまま更新していない」というケースが非常に多いです。定時株主総会のタイミングで毎年議事録を更新しているか、今すぐ確認してみてください。

条件③ 毎月同額の定期同額給与として支払うこと

役員報酬は、毎月同額でなければなりません。これを「定期同額給与」と言います。

「業績が良かった月は多めに払う」「ボーナスとしてまとめて払う」——これらは役員報酬として認められず、損金算入が否認されます。

支払い額を変更できるのは、原則として事業年度開始から3ヶ月以内のみです。決算が近づいてから「やっぱり増やしておこう」と変更するのは絶対NGです。

Bさんのケースはどうだったか

確認してみると、Bさんの場合は3条件すべてを満たしていました。奥様は毎日2〜3時間、経理補助として作業していて業務日報もある。毎月きっちり10万円の定額払い。株主総会の議事録も毎年更新している。

「問題ありませんよ」とお伝えしたら、ほっとされていました。

一方で、知人から聞いた否認ケースを確認すると、「議事録なし・金額バラバラ・業務実態が説明できない」という状態だったようです。3つ全部アウトだったわけです。

今の状況をすぐ確認してほしい

もし配偶者への役員報酬を続けているなら、今すぐ3点を確認してください。

  • 業務実態が説明できるか(記録が残っているか)
  • 直近の株主総会議事録が存在するか
  • 毎月同額を定期的に支払っているか

1つでも「怪しいかも」と感じたら、顧問税理士に相談しておくことをおすすめします。数年分が一気に否認される前に、今のうちに整えておくのが得策です。「大丈夫だろう」という感覚が、一番危ないです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。