先日、建設業を営む社長からこんな連絡が来ました。決算前にノートPCを10台まとめて買いたいが、「どうせ4年かけて経費になるんですよね?」という確認です。

このひと言、実はとてももったいない前提が入っています。

中小企業には、30万円未満の設備を購入した年に全額即時経費化できる特例があります。「少額減価償却資産の特例」と呼ばれるこの制度、知っているだけで毎年の節税額が大きく変わります。

通常の減価償却とどこが違うのか

設備や機器を購入したとき、税務上は「耐用年数」に応じて数年かけて経費にするのが基本ルールです。

たとえばノートPCの耐用年数は4年。30万円のPCを買っても、定額法なら1年目に経費にできるのは約7万5千円。残り22万5千円は翌年以降に先送りになります。

利益が出ている今期に全額を経費にしたくても、通常の減価償却ではそれができません。ここに少額特例の出番があります。

実際の数字で節税効果を見てみると

1台29万8,000円のノートPCを10台購入、合計298万円。通常の4年定額償却なら今期に落とせるのは約74万円です。

少額特例を使うと、298万円が丸ごと今期の経費になります。実効税率23%で計算すると、298万円×23%≒約69万円の税負担が今期の申告で軽くなります。

4年分割との差額は約51万円。買うものはまったく同じでも、制度を知っているかどうかでこれだけ手元に残るお金が変わります。

適用するための4つの条件

この特例には要件があります。外すと全額経費化できなくなるので、しっかり確認しておきましょう。

① 対象は中小企業者のみ

資本金1億円以下の法人、または常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主が対象です。大企業は対象外となります。

② 1点あたりの取得価額が30万円未満

合計金額ではなく、1点(1台・1個)ごとの価格で判定します。10台まとめ買いしても、1台が29万8,000円なら問題ありません。

③ 年間合計300万円まで

同一事業年度内に特例適用できる金額の上限は300万円です。合計が300万円を超える部分は通常の減価償却に戻ります。

④ 事業年度内に使い始めていること

購入するだけでは足りません。その事業年度中に実際に事業の用に供していることが条件です。「買ったけど開封していない」ではNGです。

決算前の駆け込み購入は有効か

「決算月に慌てて買っても使えますか?」という質問をよく受けます。

3月決算であれば、3月中に購入して事業で使い始めれば今期の経費になります。日付と使用開始の事実が重要で、「期末ギリギリに間に合った」でも問題ありません。

ただし申告書の別表に、特例適用の記載が必要です。経理処理だけでなく申告書上での対応もセットで税理士と確認しながら進めましょう。

対象になりやすい設備の例

30万円未満の設備は、業種を問わず意外と多いものです。

  • ノートPC・タブレット(法人向けで29万円前後のモデルは多い)
  • デジタルカメラ・ビデオカメラ
  • 電動工具・測量機器・計測器
  • 応接室の家具・椅子(1脚単位で判定)
  • 小型エアコン・空気清浄機

決算前に「今期中に買う予定のものはあるか」を棚卸しして、30万円未満に収まるものがあれば積極的に前倒し購入を検討する価値があります。

まだ4年分割で処理していますか

設備投資をするたびに「数年かけて経費化するもの」と思い込んでいる社長は少なくありません。でも中小企業なら、30万円未満のものを選ぶだけで今期に全額落とせる選択肢があります。

今期の利益が見えてきたら、少額特例を活用できる設備購入を顧問税理士と話し合ってみてください。「今期あといくら使えるか」を先に確認しておくと、購入計画がずっと立てやすくなります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。