先日、年商2億円ほどの建設業の社長と話していたとき、こんなことを言われました。「家賃、ずっと自分の財布から払ってるんですよ。月20万円。なんかもったいない気がして」と。

その感覚、正解です。月20万円、年間240万円を手取りから払い続けるのは、税務上かなり損をしている状態かもしれません。ちょっとした仕組みの切り替えで、その家賃丸ごとが法人の経費になる方法があります。

自宅を「法人に貸す」という発想

仕組みはシンプルです。社長が個人で契約していた自宅の賃貸契約を、法人名義に切り替えます。そして法人は「社宅」として、社長に使用させる形にします。

賃貸物件なら、大家さんと法人が直接契約する形に変更するか、社長が一度解約して法人が再契約するケースが多いです。自己所有の物件なら、社長個人から法人へ賃貸する契約を結びます。

これにより、月20万円の家賃は個人の手取りから出ていくのではなく、法人の経費として計上されます。年240万円が法人の課税所得から丸ごと落ちる計算です。

実際の手取りへのインパクト

「経費になる」と言われてもピンとこない方に、もう少し具体的な話をします。

今の状態を考えてみてください。月20万円の家賃を個人で払うには、その分の手取りが必要です。役員報酬を受け取って、所得税・住民税・社会保険料を引かれた残りから払っているわけです。手取り率が65%程度とすると、20万円の手取りを得るには役員報酬が約31万円必要な計算になります。

社宅スキームを組むと、法人が直接家賃を払います。役員報酬を上乗せする必要がなくなるため、社会保険料の削減効果まで加わります。単純な法人税の節税にとどまらず、社会保険料の節約という副次効果も見逃せません。

法人税の実効税率が約30%だとすると、年240万円の課税所得圧縮で72万円前後の税負担軽減が期待できます。これに社会保険料の削減分が加わるイメージです。

「適正な家賃設定」が絶対に外せない条件

ただし、ここが一番の注意点です。

法人が社宅として役員に使用させる場合、役員は法人に対して「社宅使用料」を支払う必要があります。この金額が税務上の基準を下回ると、差額が「現物給与」として役員に課税されてしまいます。

使用料の計算には、固定資産税評価額をもとにした算式が使われます。豪華社宅に該当する場合は別の基準が適用されるケースもあり、物件ごとに適正額が変わります。「とりあえず月1万円払えばいい」というわけにはいかず、きちんと計算した金額を設定しなければなりません。

また、自己所有物件を法人に貸す場合、社長個人に「不動産所得」が発生します。法人経費になって個人はゼロ課税、という美味しい話にはならないため、トータルで見た設計が必要です。

どんな社長が使える仕組みか

このスキームが特に効果的なのは、次のような条件がそろっている方です。

  • 月10万円以上の家賃を個人で払い続けている
  • 法人に一定の課税所得が発生している
  • 今まで社宅の整備をしたことがない

逆に、法人が長期赤字で課税所得がない場合や、すでに別の不動産スキームを活用している場合は、単純に切り替えるよりも全体を見直す必要があります。

今期中に動くなら、早めに動く

契約の切り替えや社内規程の整備には多少の時間がかかります。決算の2〜3ヶ月前には着手しておかないと、当期の節税効果が半減することもあります。

まだ自宅家賃を個人で払い続けているなら、まず顧問税理士に「社宅スキームを組めますか」と一言確認してみてください。同じ家賃を払うなら、少しでも賢い方法で処理したほうがいいに決まっています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。