先月、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。
「決算が来月なんだけど、もうできることって何もないよね?」
決算まで1ヶ月を切ったタイミングでのご相談です。でも、そんなことはありません。3月決算の会社にとって、この時期こそ節税の「駆け込み期間」。正しく手を打てば、300万円以上の節税が現実的に狙えます。
今回は、見落としがちな節税5項目を、効果が高い順にお伝えします。
第5位:消耗品・在庫の前倒し購入
まず取りかかりやすいのが、消耗品や事務用品の前倒し購入です。コピー用紙、トナー、作業用手袋など、どうせ使うものを3月末までに購入しておけば、今期の経費に計上できます。
ただし注意点があります。「未使用のまま倉庫に山積み」という状態では認められないケースがあります。業務上の合理的な量であること、かつ実際に使用する見込みがあることが前提です。税務調査で否認されないよう、あくまで合理的な範囲で活用してください。
第4位:経営セーフティ共済の前納
中小企業の万が一に備える「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」は、掛金の全額を損金算入できる優れた節税ツールです。月額5,000円から最大20万円まで設定でき、年間最大240万円を経費にできます。
見落とされがちなのが「前納制度」の活用です。3月末までに翌年分の掛金を一括前払いすると、その全額を今期の経費として計上できます。すでに加入済みの社長は、前納申請の手続きを今すぐ確認してください。まだ加入していない場合も、今期中に加入すれば当期分の掛金が損金になります。
第3位:少額減価償却資産の特例
中小企業経営者にとって使い勝手がいいのが、この特例です。30万円未満の備品や設備を3月末までに「購入して使用開始」すれば、年間合計300万円を上限に全額即時経費にできます。
ノートPC、スマートフォン、デスク、チェア、カメラ、ソフトウェアのライセンスなど、業務で使うものなら幅広く対象になります。「そろそろ買い替えようと思っていた」ものがあるなら、今期中に動くのが正解です。実効税率が23%程度であれば、300万円フル活用で約70万円の節税効果があります。
ひとつ注意したいのは「取得して使用開始していること」が条件だという点です。3月末に購入してダンボールのまま倉庫に置いてあるだけでは認められません。開梱・設置・起動まで済ませておきましょう。
第2位:短期前払費用の一括計上
家賃、保険料、リース料、顧問料など、継続的に発生する費用を1年分まとめて前払いすると、支払った期の全額を経費にできます。これが「短期前払費用の特例」です。
たとえば月30万円の事務所家賃を3月末に12ヶ月分(360万円)前払いすれば、360万円がまるごと今期の経費になります。翌期は支出がゼロになる代わりに、課税の繰り延べという確実な節税効果を得られます。
適用条件は「毎年同様に支払うこと」「支払日から1年以内にサービス提供が完了すること」の2点です。家賃や保険料のような定額・定期のものは適用しやすい一方、都度性の高い費用は慎重に判断してください。
第1位:決算賞与で損金を確定させる
節税効果・即効性ともに最も高いのが決算賞与です。ポイントは「3月末までに全従業員へ書面で支給額を通知し、4月末までに実際に支払うこと」という2つの要件を満たすことです。
この条件さえ満たせば、実際の支払いが4月になっても3月期の損金として計上できます。賞与として出す金額が大きければ節税効果はそれだけ上がりますが、社会保険料の増加なども合わせて試算しておくことが重要です。
「今期は利益が出すぎた」と気づいたのが3月中旬だったとしても、まだ間に合います。税理士と連携して書面の文面・支給額の設定を急いでください。
5項目すべてを活用すれば、合計で300万円を超える節税が現実的に狙えます。ただし、いずれも「期末までに実際に実行していること」が大前提です。「検討していた」「予定だった」だけでは経費になりません。
3月決算の社長は、今すぐこの5項目をチェックリスト代わりに活用してみてください。そして「これは自社に使えるか?」を税理士と一緒に確認するのが最も確実な方法です。決算をただ受け入れるのではなく、残りの日数で打てる手をすべて打つ——それが利益を守るオーナー経営者の姿勢だと思います。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。