先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「決算が終わったあと税理士から報告を受けたんですが、思ったより税金が多くて……」。話を聞いていくと、毎月のスマホ代・通勤に活用している書籍サービス・自宅の一室を書斎として使っている家賃——これが全部、個人払いのままになっていたんです。

「でもそれって、経費にできるんですか?」と首をかしげる方も多いと思います。結論から言うと、できます。業務に関連している支出であれば、法人の経費として計上する道は十分あります。そしてこれが積み上がると、想像以上の節税効果につながります。

年150万円の「埋蔵経費」を掘り起こす

経費の見直しによく出てくる項目を、少し具体的に挙げてみましょう。

  • スマートフォン・通信費:仕事で使う割合を案分して法人経費に
  • 書籍・セミナー・オンライン講座:経営や業界知識のためのインプットは教育費として計上可能
  • 自宅の仕事スペース:社長の「在宅勤務」分は、家賃・光熱費の一部を経費化できるケースがある
  • 健康診断・人間ドック:役員を対象とした健診費用は福利厚生費として認められる場合が多い
  • 自家用車の業務利用分:走行距離の記録があれば按分して経費に

これらを一つひとつ拾い上げていくと、年間で150万円ほどになるケースがあります。法人実効税率33%で計算すると、約50万円の税負担が変わってくる計算です。社員1人を1ヶ月雇える金額が、帳簿上の工夫で手元に残るわけです。

なぜ見落とされるのか

では、なぜこうした経費が処理されないまま残ってしまうのでしょうか。

よくある理由は「面倒くさい」と「そこまでしていいのか」の二つです。前者は習慣の問題で、プライベートと法人の口座・カードが混在していると、領収書の振り分けが億劫になります。後者は知識の問題——「自宅の家賃を経費にする」という発想自体がピンとこない方が多い。

もう一つ付け加えると、税理士がすべて拾ってくれるとは限らないという現実があります。顧問税理士はあくまで申告の正確性を担保するプロです。社長自身が「これも経費になりますか?」と能動的に持ち込まないと、見落としたまま申告が完了してしまうことは珍しくありません。

経費にするための「2つの条件」

経費計上には、原則として2つの条件があります。

一つ目は証憑(領収書・請求書)の保管。「払った気がする」では通用しません。電子領収書も含め、日付・金額・支払先が確認できるものを保管しておく必要があります。

二つ目は業務関連性の説明ができること。税務調査の場で「なぜこれが業務に必要か」を説明できるかどうかが、判断の分かれ目になります。スマホなら「取引先との連絡に使用」、書籍なら「業界動向のリサーチ」——一言でも根拠を記録しておくだけで、いざというときに大きな違いが出ます。

この2つを整えておけば、あとは税理士と相談しながら適切に処理できます。逆に言えば、証憑がなければどれだけ正当な経費でも計上できない、という点には注意が必要です。

今期、見直すなら何から始めるか

まず最初にやるべきことは、法人カードを1枚作って業務用に統一することです。プライベートとの混在を防ぐだけで、経費管理の手間は大幅に減ります。次に、スマホや書籍など毎月継続的に発生する支出をリストアップして、税理士に「これは経費になりますか?」と確認してみてください。

自宅の仕事スペースについては、登記や契約の形態によって取り扱いが変わるため、やや複雑です。ただ、適切に整えれば家賃の一部を経費化できるケースは確かにあります。「なんとなく難しそう」で諦めるよりは、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

見落としている経費を拾い上げるだけで、毎年数十万円の差が生まれます。節税は「特別なスキーム」ではなく、日常的な管理の積み重ねです。まだ経費の洗い出しをしていないなら、次の決算前に一度棚卸しをしてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。