先日、顧問先の製造業の社長から「税務調査が入るかもしれない」と連絡がありました。理由を聞くと、取引先からメールで届いた請求書を、毎回印刷してファイルに綴じていたというのです。「えっ、紙で保管してたらダメなんですか?」——今でも同じ感覚でいる社長は、決して珍しくありません。

2026年は、知らないと確実に損する税制の変化が重なっています。しかも「知らなかった」では済まされない話ばかりです。3つだけ、今すぐ確認しておいてください。

電子帳簿保存法——「紙で保管」が税務調査の地雷になる

2024年1月から、電子取引のデータ保存が完全義務化されています。つまりメールやウェブで受け取った請求書・領収書は、データのまま保存しなければなりません。印刷して紙ファイルに綴じるのは、もうNGです。

「うちはクラウドに保存しているから大丈夫」という社長も、保存形式が正しいかどうかを確認してください。日付・金額・取引先で絞り込める検索機能を備えていないと、制度の要件を満たしていないと判断されます。

税務調査で未対応が発覚した場合、最悪のケースでは青色申告の承認取り消しになります。青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除など毎年使ってきた節税の仕組みが根こそぎ使えなくなる——対応コストより、未対応のリスクのほうがはるかに大きいのです。この優先順位だけは間違えないでください。

賃上げ促進税制——給与を上げると法人税が下がる仕組み

社員の給与総額を前年比1.5%以上増やした会社は、増加分の最大45%を法人税から直接差し引けます。2027年3月まで続くこの制度は、費用として計上するのではなく「税額控除」なので、効果が非常に大きい。

たとえば、給与総額を年間300万円増やした場合、最大135万円が法人税そのものから引かれます。社員の手取りが増え、法人の税負担も減る——条件を満たせば、これだけ強力な節税になります。

ただし、役員報酬は計算の対象外で、あくまで従業員の給与が基準です。「今期、ちょうど昇給を検討していた」という会社ほど、この制度を念頭に置いて判断を進めてください。昇給幅をわずかに調整するだけで、税額控除の適用条件が変わることもあります。

基礎控除の引き上げ——役員報酬の設計を見直す好機

2025年分の所得税から、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられました。10万円の上乗せは一見地味ですが、役員報酬の最適額を見直すタイミングとして使えます。

役員報酬は、法人税・所得税・社会保険料の合計コストが最も低くなる金額に設定するのがセオリーです。基礎控除が変わると、個人で受け取るべき最適額も変わります。前回の設計から1年以上経っている場合は、今期の決算前に試算を一度やり直してみてください。

特に扶養家族がいる場合は、基礎控除以外の控除も含めたトータルの最適化が効いてきます。顧問税理士に「基礎控除が上がったので、役員報酬の試算を見直してほしい」と一言伝えるだけでOKです。

3つのうち、今すぐ動くべきはどれか

電子帳簿保存法はすでに義務化されているので、今日から動いてください。賃上げ促進税制は今期の給与改定と連動させて判断を。基礎控除の見直しは、次の役員報酬改定のタイミングで税理士に確認するだけでOKです。

「来期から考えます」では間に合わない話もあります。特に電子帳簿保存法は、対応が遅れるほどリスクが積み上がります。「うちは大丈夫」と思っている会社ほど、一度書類の保管状況を洗い出してみてください。まだ対応が終わっていないなら、今期中に整備しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。