先日、年商2億円の建設業の社長からこんな質問を受けました。
「税制改正があったって聞いたんですけど、うちには関係ありますか?」
正直、こういう質問は嬉しいです。改正を「なんとなく聞いたことはある」で終わらせず、自分ごととして捉えようとしている証拠だからです。結論から言うと、あります。しかも、知っているだけで確実に手取りが増える改正です。
基礎控除が10万円、引き上げられた
2025年分の所得税から、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられました。住民税の基礎控除も43万円から53万円へ、同じく10万円のアップです。
基礎控除とは、所得のある人なら誰でも収入から差し引ける控除のことです。これが増えるということは、税金を計算するベースとなる「課税所得」がそのぶん減る、つまり自動的に税負担が軽くなるということです。
手続きは不要で、確定申告や年末調整の計算に自動的に反映されます。「知らなかった」では損をしない改正ではありますが、金額感を把握しておくことに意味があります。
役員報酬1,200万円の社長で試算すると
具体的な数字で見てみましょう。月100万円、年収1,200万円の役員報酬を取っている社長のケースです。
この水準だと所得税の適用税率はおおよそ33%前後になります。基礎控除が10万円増えた分の節税効果を計算すると、所得税で約3万3,000円の減税、住民税で10万円×10%の1万円の減税、合計で年間約4万円のプラスになります。
月換算で3,300円ほど。「あれ、思ったより少ないな」と感じた方、正直な反応だと思います。でも、ここで終わらないのがポイントです。
「自動で4万円」は入り口に過ぎない
この改正で増える4万円は、何もしなくても手に入ります。でも、それを「ラッキー」で終わらせてしまう社長と、これを機に設計を見直す社長では、数年後に大きな差が開きます。
社長の手取りを本質的に増やすには、大きく二つの軸があります。
役員報酬の金額設計を見直す
役員報酬は期中に変更できないのが原則です。だからこそ、年に一度の定時株主総会のタイミングで、今期の業績と来期の見通しをにらみながら丁寧に設計し直す必要があります。
報酬が高すぎると累進課税で個人の税率が上がり、低すぎると法人に利益が残って法人税がかかる。この「最適な報酬額」は業績や家族構成によって毎年変わります。「去年と同じでいいか」が一番もったいないパターンです。
経費設計で課税所得を削る
役員社宅、出張旅費規程、社用車の活用、これらをきちんと整備するだけで、同じ役員報酬でも手取りは大きく変わります。年間50万円以上の差が出るケースも珍しくありません。
税制改正の「4万円」と比べると、経費設計の改善余地がいかに大きいかがわかります。
今期中に動けることがある
基礎控除の恩恵は2025年1月以降の所得に自動適用されるので、今から特別な手続きは不要です。
一方、役員報酬の変更や経費規程の整備は、決算が近づいてから慌てても遅いことがほとんどです。旅費規程は就業規則の一部として整備が必要ですし、役員社宅の賃貸借契約は年度の早い段階で動かないと節税効果が出ません。
税制改正をきっかけに「自分の報酬設計は最適か」を税理士に一度確認してみることをおすすめします。「4万円の改正があったんですよね」と切り出せば、自然と全体の見直し会話につながるはずです。
今期の決算月がまだ先であれば、今が動き時です。改正の恩恵を受けながら、さらに上乗せできる設計を整えておきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。