先日、年商3億円ほどの建設会社を経営する社長から、こんな連絡が届きました。「税理士に勧められて1億円のマンションを買ったのに、3年後の税務調査で数百万円の追徴課税を受けた」というのです。

不動産は節税の王道、というイメージがあります。でも実際には、やり方を間違えると節税どころか大きなマイナスになるケースが少なくありません。今回は私が実際に見聞きした「不動産節税の失敗パターン」を3つに絞ってお話しします。

①「路線価評価」が通用しなくなっている

かつては不動産を使った相続税対策の定番として、「路線価での評価額が時価を大きく下回る物件を購入し、相続財産の評価を圧縮する」という手法が広く使われていました。タワーマンションの一室を購入し、現金2億円を相続させるより、評価額3,000万円の物件として相続させる、といった使い方です。

ところが2022年4月、最高裁判所がこの手法に正式にNOを突きつけました。「著しく不適当な評価方法による場合は時価で評価し直す」という判決が確定したのです。

これ以降、税務署の目線が明らかに変わっています。節税目的が透けて見える不動産取引は、路線価評価を否認されて時価評価に引き直されるケースが急増しています。「合法だから問題ない」と思っていた社長が、後になって数百万円単位の追徴課税を受けるという事態が続いています。

②「1億円の物件=1億円節税」は根本的な誤解

「1億円のビルを買えば、1億円分を丸ごと経費にできる」と思っていませんか。残念ながら、これは根本的な誤解です。

不動産投資による節税効果の本質は、減価償却費×実効税率だけです。

たとえば1億円の収益物件(建物部分6,000万円、耐用年数20年)を購入した場合、毎年計上できる減価償却費は300万円。法人の実効税率が約34%だとすると、年間の節税額は約102万円になります。1億円の投資に対して、年間100万円程度の節税効果というわけです。

もちろん、減価償却期間を通じて継続的に節税でき、賃料収入という本業収益もあります。でも「1億円を一括で節税できる」という話ではありません。この誤解のまま不動産投資に踏み切ると、キャッシュフローの試算が狂い、思わぬ資金繰りの悪化を招くことがあります。

節税額を試算するときは「建物取得価額÷耐用年数×実効税率」という式を頭に入れておいてください。物件を見る前に、まずこの数字を確認する習慣をつけると、業者の甘い話に乗りにくくなります。

③「形だけの管理会社」は一発で否認される

法人税対策として、自社保有不動産の管理を親族が経営する別会社に任せ、管理費を支払うことで利益を圧縮するという手法があります。設計そのものは合法ですが、問題は「実態があるかどうか」です。

実態が伴っていないと、支払った管理費が全額損金不算入となります。

税務調査で「実態がない」と判断されやすいのは、たとえばこんなケースです。管理会社のスタッフが実際には別の業務しかしていない。契約書はあるが業務日報や作業記録が一切残っていない。管理費の割合が相場(家賃収入の5〜10%程度)を大きく超えている。

税務調査では、実際の業務実態を証拠ベースで確認されます。形を整えるだけでは不十分で、「誰が・いつ・何をしたか」が記録として残っていないと、否認を免れません。

修正申告になると、節税額を超える追徴になることも

ここまで紹介した3つのうちどれかに該当して税務調査で指摘を受けると、「修正申告」を求められることになります。

修正申告の怖いところは、本来の税額に加えて過少申告加算税(通常10%)と延滞税(年利最大14.6%)が上乗せされる点です。仮に追加で払うべき税金が500万円だったとすると、加算税50万円+延滞税数十万円がさらに積み上がります。当初「節税できた」と思っていた金額を上回る追徴になるケースも、決して珍しくありません。

節税は「合法かどうか」だけでなく、「税務調査で問題になったときに正面から説明できるか」というラインで考えることが重要です。説明できない節税は、結局のところリスクを先送りしているだけです。


不動産を使った節税は、正しく設計すれば有効な手段です。ただ、「節税効果を過大に見せる」「実態が伴わない取引を作る」という方向に進むと、後から深刻な問題になります。不動産節税を検討しているなら、物件を見に行く前にまず「節税額の試算」と「税務調査リスクの評価」を専門家に依頼してください。後から気づいても、手遅れになることがあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。