先日、ある不動産オーナーの社長からこんな連絡が届きました。「税務調査が入って、200万円以上の追徴が来た。不動産節税を始めて3年目なんですが……」。

電話越しに声が震えていたのを、今でも覚えています。

不動産を使った節税スキームは、社長の間で根強い人気があります。賃貸収入を法人に移したり、管理会社を作って経費を計上したり。確かに仕組みとしては成立するのですが、やり方を一歩間違えると、今回のように数百万円の請求書が届く羽目になります。

では、何がNGで、何なら大丈夫なのか。税務署の目線から整理してみましょう。

税務署が狙う「3つの失敗パターン」

① 私用マンションを全額経費に計上

自分が住んでいるマンションを法人名義にして、家賃を全額経費にしているケース。よく見かけますが、これは危険です。

実際に住んでいる部分は「私的使用」なので、経費にできるのは仕事に使っている割合(按分比率)だけです。100%を経費に落としていたら、税務調査でほぼ確実に否認されます。

大切なのは「実際にどれくらい業務で使っているか」の記録です。来客対応に使っているなら使用日時を残す、会議室として使うなら写真や議事録を保管する。そういった証拠の積み重ねが、否認を防ぐ盾になります。

② 実態のない管理会社への高額管理費

節税目的で管理会社を設立し、賃貸収入の30〜40%を管理費として支払うスキームは広く知られています。ただし、「実態がない」と判断されると終わりです。

税務署が見るのはシンプルです。「その管理会社、本当に仕事をしているか?」。従業員がいない、業務日報がない、賃借人との交渉記録がない──こうした実態のない管理会社は「利益を移すためだけの箱」と認定され、支払った管理費を丸ごと否認されます。

設立するだけでなく、実際に管理業務を行い、それを記録することが不可欠です。

③ 時価より高い法人への不動産売買

個人から法人へ不動産を売る際、時価より高い金額で売却するケース。差額分が「みなし贈与」として課税されることがあります。

不動産の時価は路線価だけで決まるわけではなく、収益還元法など複数の評価方法が存在します。法人への売却価格が適正かどうかは、事前に不動産鑑定士や税理士に確認しておくのが原則です。

実際に起きた「社長の末路」

冒頭の社長の話に戻ります。彼は保有する3棟の不動産について、賃料収入の30%を法人に移していました。節税効果は確かにあったのですが、法人側での業務実態の記録が不十分で、税務署から「実態なし」と判断されてしまいました。

結果、本税150万円に加え、重加算税35%が課され、合計で200万円を超える追徴課税を受けることに。さらに延滞税も加算されるため、実際の支払額はそれ以上でした。

「節税できていると思っていたのに、逆に大損した」という、最悪のシナリオです。

忘れてはいけない「7年遡及」の恐ろしさ

税務調査の怖いところは、過去7年に遡って修正申告を求められる点です。

毎年50万円の節税をしていたとしても、7年分遡及されれば350万円以上の追加納税が発生します。そこに重加算税(35〜40%)と延滞税が乗ると、手元に残るのは節税効果どころか、大きなマイナスです。

重加算税が課されるのは「仮装・隠蔽」があったと認定されたケースです。悪意がなくても、記録が不十分だと「故意に隠した」と疑われることがあるので、注意が必要です。

節税は「形式」より「実態」が命

不動産節税に限らず、節税スキームに共通する鉄則があります。「形式を整えるだけでは不十分。実態を作り、それを記録する」ということです。

契約書や領収書を揃えるのは最低ライン。それに加えて、業務日報、会議録、やり取りのメール、写真など、実際に経済活動が行われた証拠を日常的に蓄積することが、税務調査に耐えられるスキームの条件です。

節税コンサルタントから聞いた話だけで動くのは危険です。「このスキームは問題ない」と言われても、税務署がどう判断するかは別の話。必ず税理士に現状のスキームを見てもらい、問題がないか確認してください。


不動産節税をすでに始めているなら、今一度、スキームの「実態」を点検してみてください。記録が不十分な部分があれば、今期中に整備を始めるのが最善策です。税務調査が来てからでは遅い、というのが、200万円を追徴された社長からの、率直なメッセージでした。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。