先日、年商3億円ほどの建設業の社長から、こんな話を聞きました。
「顧問税理士に言われて社員の給与を上げたんだけど、税金が安くなったとか全然ピンとこなかった」
よく話を聞いてみると、どうも賃上げ促進税制が適用されていたようなのですが、本人はその仕組みをまったく把握していなかったんですよ。知らないまま得していたのなら良いのですが、逆に知らないまま損していたケースも実はかなり多い。
2025年は、社長が知っておくべき節税ルールがいくつか変わっています。特に重要な3つを、今日はわかりやすく整理しておきます。
賃上げで法人税が直接減る「賃上げ促進税制」
国が中小企業の賃上げを促すために設けている制度で、2025年版では条件と控除率が強化されました。
シンプルに言うと、前年より給与総額を1.5%以上増やすと、増えた分の最大45%を法人税から直接差し引けます。
「所得控除」ではなく「税額控除」という点がポイントです。たとえば社員全員分の給与が年間で合計45万円増えたとすると、法人税そのものが約20万円減る計算になります。利益を圧縮するのではなく、税金そのものが安くなる、それが税額控除の強さです。
今期まだ給与改定を検討中の社長は、この制度の適用要件を頭に入れておくと、「どこまで上げると控除が取れるか」という逆算ができます。
「1万円まで全額OK」に変わった交際費ルール
交際費といえば長らく「1人あたり5,000円以下の飲食費は全額損金」というルールが定番でした。
ところが2024年4月以降、この上限が1万円に引き上げられています。
取引先との会食で1人8,000円使ったとして、以前は全額を交際費として落とせなかった場面が、今は全額損金になります。地味に見えますが、接待の多い業種では年間トータルでかなりの差が出ます。
問題は、古いルールのまま社内処理している会社が少なくないこと。経理担当者も「5,000円ルール」で覚えていることが多く、本来落とせる経費を自主的に制限してしまっているケースがあります。
社内の経費精算ルールが古い基準のままになっていないか、一度確認する価値があります。
期末の設備投資が節税になる「少額減価償却の特例」
30万円未満の備品や機器を購入した場合、本来は数年にわたって減価償却するところを、購入した年に全額経費として計上できるという特例が中小企業向けに用意されています。
年間上限は合計300万円まで。
パソコン、業務用のソフトウェア、小型の機器類など、対象になるものは意外と幅広くあります。今期の利益が思ったより出そうだと感じている社長にとって、「今期末に必要な備品をまとめて買う」というのは、会計上の節税としてかなりシンプルかつ効果的な手段です。
注意したいのは、あくまで「事業に必要なもの」であること。節税のためだけに不要なものを買っても意味がありません。ただ、どうせ来年買うつもりだったものがあるなら、今期中に動く理由は十分あります。
「知らなかった」は税務署に通じない
税制は毎年少しずつ変わります。大きな改正ではないと感じるかもしれませんが、積み重なると差は小さくありません。
今日紹介した3つのポイントは、どれも「知っていれば使えた」ものです。賃上げの額を決める前に知っているか、接待費を処理する前に知っているか、期末購入を検討する前に知っているか——それだけで手元に残るお金が変わってきます。
顧問税理士がいる社長は、今期の方針を一度擦り合わせてみることをおすすめします。まだ定期的な税務相談の場を持っていないなら、決算前のこの時期に動いておくのが賢明です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。