先日、法人を設立して半年が経つという社長から連絡が来ました。「設立の手続きは無事に終わったんですが、節税って何かしておくことがありましたか?ちょっと不安になってきて…」

この手の相談、本当に多いんです。法人設立の手続き自体は司法書士や行政書士がサポートしてくれるものの、「設立後すぐに何をすべきか」まで教えてくれる人は少ない。その結果、初年度に節税の機会をまるっと逃してしまうケースが続出しています。

知っているかどうかだけの差で、1年間に100万〜150万円以上変わることもあります。今回は、設立初年度から使える節税策を3つ、数字を交えながら紹介します。

3位:少額減価償却特例 — まず「備品の買い方」を変える

法人設立直後は、パソコンや机、椅子、カメラ、ソフトウェアなど、一気に備品を揃えることが多いですよね。

このとき活用してほしいのが少額減価償却特例です。取得価額30万円未満の備品であれば、その年に全額経費として計上できます。通常、高額な備品は数年かけて減価償却しますが、この特例を使えば購入した年に一括で落とせるんです。

たとえば20万円のMacBook、15万円のデスク、8万円のモニター、5万円のソフトウェアを購入したとすると、合計48万円がその年の経費になります。実効税率30%なら、それだけで約14万円の節税です。

ただし、中小企業者等(資本金1億円以下など)が対象で、年間合計300万円までという上限があります。設立初年度に備品をまとめて購入するのは、この特例との相性が非常に良いタイミングです。

2位:役員社宅 — 家賃の大部分を会社経費にする

「自宅兼仕事場」として働いている社長は多いと思います。でも、個人名義で家賃を払い続けているなら、それは大きな損です。

会社名義で物件を借り、社長に社宅として提供する仕組みを「役員社宅」といいます。この場合、家賃の80〜90%ほどを法人の経費として計上できるんです。

月20万円の家賃を例に計算してみましょう。年間家賃は240万円。そのうち法人経費になるのが約192万円(80%)。実効税率30%で計算すると、年間約57万円の節税になります。

しかも、この節税効果は毎年続きます。5年で285万円、10年で570万円の差になる。単純な数字ですが、積み重なると笑えない金額です。

社宅として認められるには、適正な賃料を社長個人が会社に支払う必要があります(通常は市場家賃の10〜20%程度)。詳細な計算方法は税理士に確認するのがおすすめですが、「会社名義で借りる」という構造自体は非常に使い勝手の良い節税策です。

1位:役員報酬の最適設計 — 設立後3ヶ月以内が絶対条件

これが最も影響が大きく、かつ期限があるので注意が必要です。

法人の役員報酬は、事業年度開始から3ヶ月以内に決定しなければなりません。この期間を過ぎると、その事業年度中は原則として変更できなくなります。設立直後に「後でゆっくり決めればいいか」と思っていると、気づいたときには手遅れになっている。

では、なぜ役員報酬の設計が最大の節税になるのか。

個人事業主は、売上からすべての経費を引いた「事業所得」に対して、最高45%(住民税込みで55%)の税率がかかります。一方、法人を通じて役員報酬を受け取ると「給与所得控除」が適用されます。年収800万円なら190万円が自動的に控除される仕組みです。

個人事業時代と同じ収入でも、法人経由で受け取るだけで年間100万円以上の節税になるケースは珍しくありません。さらに、法人側に利益を残せば法人税率(中小企業は実効税率約23〜30%)で課税されるため、個人の累進税率との差を活かした税負担の分散が可能になります。

報酬額をいくらに設定するか、法人にどれだけ利益を残すかのバランスは、売上規模や家族構成、経費の状況によって変わります。「なんとなく月50万円にした」という設計では、大きなチャンスを逃している可能性があります。


この3つを整理すると、初年度から年間100〜150万円の節税ができる構造が作れます。大事なのは、どれも「知っていて当たり前」ではなく、「知らなければ手を打てない」仕組みだということです。

法人を設立したばかり、あるいは設立を検討している方は、役員報酬の設計だけは特に早めに税理士と話すことをおすすめします。3ヶ月の期限はあっという間に過ぎます。備品の購入タイミングや社宅の活用も含めて、設立初年度のうちに一度、全体のプランを税理士と一緒に見直してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。