先日、独立して3年目の経営者からこんな相談を受けました。
「妻が会社の経理や問い合わせ対応を手伝ってくれているんですが、給与は払っていないんですよね。なんとなく、家族だからいいかなと思っていて」
これ、実はとてももったいない話です。奥さんに正式に給与を支払うだけで、年間数十万円〜100万円単位で税負担が変わることがあるんです。今日はそのしくみをわかりやすくお伝えします。
給与を「経費」にすると、どれだけ得になるのか
法人が従業員に給与を支払うと、その全額が会社の経費(損金)として計上できます。たとえば奥さんに月20万円の給与を払えば、年間240万円が会社の利益から差し引かれます。
法人税率をざっくり25%と仮定すると、240万円 × 25% = 約60万円の節税です。これだけでも十分インパクトがありますよね。
でも、節税効果はこれだけじゃありません。
「給与所得控除」というボーナスがある
個人が給与収入を得ると、「給与所得控除」という自動的な控除が適用されます。簡単にいえば、「給与をもらった人には、一定額を税金の計算から引いてあげますよ」という制度です。
年収240万円の場合、給与所得控除は約78万円。つまり奥さんは240万円もらっても、課税対象は162万円程度になります。所得税・住民税の負担はかなり軽くなり、家族全体での手取りは思った以上に増えるわけです。
会社の節税+奥さんの手取り増加、この二つが同時に起きるのが「家族給与」の最大の魅力です。
条件をクリアしないと税務署に否認される
ただし、ここで甘く見てはいけないポイントがあります。
家族への給与が経費として認められるためには、「実際に働いていること」が絶対条件です。名前だけ従業員にして給与を払う、いわゆる「名義貸し」は税務調査で即アウトになります。
具体的に押さえておきたいポイントはこちらです。
- 業務内容が明確であること(経理、電話対応、SNS運用など)
- 勤務時間や業務実績を記録・管理していること
- 給与額が仕事の内容・量に見合った相場であること
- 雇用契約書や給与台帳など書類が整っていること
「うちは夫婦だから口頭でOK」という感覚は危険です。税務署は書類と実態の両方を見てきます。
給与額の設定は「相場感」がカギ
節税効果が大きいからといって、極端に高い給与を設定するのも問題です。同業他社で同じ業務をする人を雇った場合の相場、というのが一つの基準になります。
月10〜20万円程度の範囲で、仕事の内容・量にきちんと見合った金額を設定するのが現実的です。最初から高額にするのではなく、実態に合わせて段階的に調整していく姿勢が大切です。
また、配偶者の収入が増えると、配偶者控除の適用可否や社会保険の扶養範囲も変わってきます。この点は個人の状況によって大きく異なるので、税理士と一緒にシミュレーションすることをおすすめします。
子どもへの給与はどうか
大学生や社会人の子どもが実際に手伝ってくれているケースも増えています。子どもへの給与も、実態が伴っていれば同様に経費にできます。
ただし、学業との両立や生活実態なども踏まえて、無理のない範囲の金額・勤務体制にしておくことが重要です。「とにかく高くすれば節税になる」という発想は、後々リスクになります。
まだ家族給与を活用していないなら、今期中に動いてほしい
奥さんや家族が少しでも会社の業務を手伝ってくれているなら、今すぐ雇用契約と給与支払いの体制を整えることをおすすめします。きちんとした仕組みを作るだけで、毎年数十万円規模の節税が積み上がっていきます。
「なんとなく後回し」にしている社長ほど、決算前に慌てて相談に来るパターンが多いです。税務調査に耐えられる形で運用するためにも、早い段階で顧問税理士と一度しっかり話し合ってみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。