先日、設立3年目の社長からこんな相談を受けました。
「うちの奥さん、経理とか雑務を手伝ってくれてるんですけど、給与は払ってないんです。何か変えた方がいいですか?」
変えた方がいい、どころじゃありません。これ、相当もったいない話です。
家族への給与は「全額経費」になる
法人が従業員に給与を払う場合、その金額は全額損金(経費)として計上できます。これは家族であっても変わりません。
配偶者に月20万円の給与を払えば、年間240万円が会社の利益から差し引けます。法人税率は中小企業で約23%程度ですから、単純計算で年間55万円ほどの節税になります。
でも、ここで終わりじゃないんです。
「給与所得控除」で個人の税金も下がる
会社から給与をもらう側(配偶者や子供)には、「給与所得控除」という仕組みが自動的に適用されます。年収240万円なら、この控除だけで約78万円が非課税になります。
結果として、会社側の法人税削減と、家族側の所得税削減が同時に発生する。両方を合わせると、年間100万円を超える節税になるケースも珍しくありません。
前述の社長のケースで試算してみると——配偶者への給与240万円に対し、法人税削減が約55万円、配偶者の所得税・住民税の削減が約40〜50万円。合計で軽く100万円を超えます。
ただし「実態」がなければ一発アウト
ここで必ず確認していただきたい注意点があります。
これが機能するのは、家族が「実際に仕事をしている」ことが大前提です。
税務調査で問われるのは「その給与に見合う業務が本当にあるか」という一点です。経理書類の整理、会社のSNS運用、受発注のメール対応、備品の購入管理——こういった具体的な業務を担当しているなら問題ありません。
逆に、名前だけ載せて実際には何もしていない、という状態は「架空の経費」と見なされて全額否認されます。税務調査で否認されると、追徴税と加算税のダブルパンチになりますから、むしろ損をします。
実態を証明するために残しておくべき記録としては、以下のようなものがあります。
- 業務日報や作業記録
- 送受信したメールや連絡履歴
- 給与振込の明細(手渡しより振込が望ましい)
- 雇用契約書
特に雇用契約書は最低限つくっておいてください。口約束だけの雇用は、税務署に「実態がない」と疑われる材料になります。
給与額の設定はどう考えるか
「適正な給与」というのがポイントで、業務内容や労働時間に対して社会常識の範囲内である必要があります。
週2〜3日の軽作業なのに月40万円、というのはさすがに説明がつきません。一方、週5日フルタイムで経理全般を担当しているなら、月20〜30万円は十分合理的な範囲です。
同業他社の相場感や、実際の労働時間を基準に設定しておけば、後々の説明に困ることはありません。
今すぐ動ける人は今期中に始める
この仕組みのいいところは、特別な手続きが少なくて済むことです。配偶者や子供(20歳以上であれば)を従業員として迎えるだけ。役員にするわけではないので、株主総会の決議も不要です。
必要なのは、雇用契約書の整備、給与の振込設定、そして実務の引き継ぎくらいです。
もし家族がすでに実質的に業務を手伝っているのに給与を払っていないなら、今期中に見直すことをおすすめします。毎年100万円近い節税機会を、ただ見送っているのはもったいない話ですから。
設計の詳細(給与額の水準や社会保険の扱いなど)は、顧問税理士と一度すり合わせておくと安心です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。