先日、設立3年目の社長からこんな相談を受けました。「決算月って、後から変えられるんですか?」という内容でした。
理由を聞いてみると、「なんとなく一般的な気がしたから3月にした」とのこと。実は、この「なんとなく3月」で設立した会社は、思いのほか多いんです。
決算月の選び方ひとつで、同じ売上・同じ経費でも節税額が数十万円変わることがあります。今回はその仕組みを、できるだけわかりやすくお伝えします。
なぜ決算月が節税に関わるのか
個人の確定申告は1月〜12月で固定ですが、法人は決算月を自由に設定できます。この自由度が、実は大きな武器になります。
売上が多く入ってくる時期と、経費を使いやすいタイミングを組み合わせることで、税金の計算期間をある程度コントロールできるからです。
ポイント①:繁忙期と決算期末の関係を整理する
自分の会社の売上がどの月に集中しているか、棚卸しの時期はいつか——これを一度整理することが出発点です。
繁忙期が終わった直後に決算期末を迎えると、「さあ経費を使おう」という時間的余裕がなくなります。一方、繁忙期の直前に決算月を設定しておくと、売上が立ち始める前に経費の準備ができるケースもあります。
どちらが有利かは業種や売上の波によって変わりますが、「なんとなく3月」ではなく、自社の繁閑パターンに合わせて考えることが大切です。
ポイント②:消費税の免税期間を最大化する
法人を設立すると、原則として最初の2期は消費税が免税になります。ただし条件があり、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることが必要です。
ここで効いてくるのが、決算月の設定です。
定石とされているのは、「設立月の前月を決算月にする」という方法です。たとえば10月に会社を設立するなら、9月決算にする。すると第1期が「10月〜翌9月」の12ヶ月間になり、第2期も丸々12ヶ月の免税期間を確保できます。
反対に、設立月と同じ月を決算月に設定してしまうと、第1期がほぼ1ヶ月になる場合があり、免税期間の合計が大幅に短くなることがあります。
年間売上が大きくなるほど、消費税免税の恩恵は大きくなります。売上1億円の会社なら消費税だけで年間数百万円規模の話です。設立時にここを意識しているかどうかで、その後の資金繰りが大きく変わります。
ポイント③:税金の支払い時期と資金繰りを合わせる
決算月を考えるときに見落とされがちなのが、資金繰りの視点です。
法人税の申告・納付は、決算月の翌々月末が期限です。3月決算なら5月末に納税します。問題は、「売上の少ない時期に多額の納税が重なる」と、資金ショートのリスクが高まることです。
たとえば夏に売上が集中する会社が3月決算だと、税金の支払いは5月末。売上の少ない春先に、まとまった現金が出ていくことになります。売上の多い時期に納税できるよう逆算して決算月を調整しておくだけで、資金繰りはぐっとラクになります。
既存の会社でも変更は可能
「もう決算月が決まっている会社は変えられないの?」という疑問もよく受けます。結論から言うと、変更は可能です。株主総会の特別決議と定款変更の手続きが必要ですが、制度上は認められています。
ただし、変更した期の事業年度が12ヶ月未満になる場合、消費税の判定期間がずれるなど複雑な影響が出ることがあります。変更を検討するなら、必ず税理士と一緒に試算した上で判断してください。
設立前なら、今すぐ考えておきたい
これから法人設立を考えている方にとって、決算月の選択は「やり直しの効きにくい初期設定」のひとつです。設立月・繁忙期・消費税免税の最大化・資金繰りという4つの視点を組み合わせて、自社に最適な決算月を選んでおくことをお勧めします。
「なんとなく3月」「なんとなく12月」で決めてしまうと、後から気づいたときに変更コストがかかります。設立前に税理士に相談する機会があれば、決算月についても必ず話題に挙げてみてください。数十万円単位の差が生まれることは、珍しくありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。