先日、飲食チェーンを経営する社長からこんな相談を受けました。「なんとなく3月決算にしたんですけど、これって変えられますか?」と。
話を聞いてみると、繁忙期は12月〜1月。つまり、売上がもっとも膨らんだ直後に決算を迎える設定になっていたんです。これ、節税という観点からみると、かなり損をしやすい構造です。
決算月は「なんとなく」で決めてしまいがちですが、実はこの選択ひとつで、年間の納税額が100万円以上変わることがあります。会社を設立する前、あるいは決算月の変更を検討しているタイミングで、ぜひ一度立ち止まって考えてほしいポイントです。
「3月決算」「12月決算」が多い理由と落とし穴
日本企業に3月決算が多いのは、国の会計年度に合わせた慣習や、取引先に合わせた事情があることが多いです。12月決算も、「年の区切りがわかりやすい」という感覚的な理由で選ばれることが少なくありません。
ただ、これが自社のビジネスサイクルと噛み合っていないと、思わぬ税負担を招くことになります。たとえば、夏にイベントや繁忙期が集中するビジネスなのに、9月決算にしてしまうと、売上と利益が最大化した状態でそのまま課税されてしまいます。
決算月を選ぶときの基本的な考え方は、「繁忙期の直後を避ける」ことです。
経費を使い切ってから締める、これが鉄則
節税の本質は、課税所得をいかにコントロールするかにあります。そのためには、利益が大きく膨らむ前に決算を迎えるのではなく、繁忙期で得た利益を翌期の経費で吸収できる構造をつくることが重要です。
具体的に言うと、繁忙期の「少し前」を決算月にする設計が効果的です。決算月が来る前に、広告費や設備投資、人件費などの経費をしっかり使い切ってから期を締められる。この順番が大事なんです。
逆に、繁忙期の真っ只中や直後に決算を迎えると、経費を使う時間的余裕もなく、利益がそのまま課税対象になってしまいます。年間を通じた売上の波を把握したうえで、決算月を設計することが節税の第一歩と言えます。
消費税の免税期間を最大化する「逆算の発想」
もうひとつ、見落としがちな視点が消費税です。法人を新設した場合、原則として最初の2期は消費税が免税になります。この免税期間を最大限に活かすためにも、決算月の設定が重要になります。
免税期間は「設立から2期分」ですが、この「1期」の長さが決算月によって変わります。設立月と決算月の組み合わせによっては、免税期間が実質23ヶ月になるケースもあれば、わずか13ヶ月程度で終わってしまうケースもあります。
たとえば、4月に会社を設立して3月決算にすると、最初の事業年度はほぼ12ヶ月確保できます。一方、3月に設立して3月決算にすると、最初の期がわずか1ヶ月になってしまい、免税の恩恵を受けられる期間が大幅に短くなります。
消費税の免税を最大限に活用できるかどうかで、数十万〜百万円単位の差が生まれることもあります。設立タイミングと決算月は、セットで逆算して考えることをおすすめします。
決算月は変更できるが、タイミングが重要
すでに会社を設立していて「決算月を変えたい」と思っている社長もいるかもしれません。決算月の変更は、株主総会の決議と税務署への届出で対応できます。ただし、変更した期は事業年度が短くなることがあり、それによって節税効果が一時的に薄まる場合もあります。
変更するなら、どのタイミングで動くかも含めて、顧問税理士と一緒に設計することが大切です。「とりあえず変えてみる」では、かえって損をするケースもあるので注意が必要です。
「なんとなく」で決めた決算月を、今一度見直してみてください
法人設立の手続きは何かと慌ただしく、決算月まで深く考える余裕がないことが多いです。でも、この一択が毎年の納税額に直結するとなれば、少し立ち止まって考える価値はあります。
自社の繁忙期はいつか、消費税の免税をどこまで活用できるか、この2点を軸に、設立前あるいは変更のタイミングで必ず顧問税理士に相談してみてください。たった一度の判断が、長期的に見れば何百万円もの差になることがあります。
決算月を見直したことがないという社長は、次の期が始まる前に一度税理士に「うちの決算月、最適ですか?」と聞いてみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。