先日、飲食チェーンを経営する社長からこんな相談を受けました。

「設立のとき、税理士に決算月を聞かれて、なんとなく3月にしたんですよね。でもそれって、本当に良かったんでしょうか?」

結論から言うと、その社長の業種・売上の波を聞いたあと、「少なくとも50万円以上、損している可能性があります」とお伝えしました。決算月というのは、一度決めたら簡単には変えられません。だからこそ、設立時に正しく考えておくことが大切です。

「なんとなく3月・12月」が一番危ない

会社を設立するとき、決算月をどう決めましたか?「3月って官公庁っぽくて安心」「12月はキリがいい」という理由で選ぶ方が、実は非常に多いんです。

でもこの選び方、節税の観点からはほぼノーチェックで損をしている状態です。決算月は単なる「締め日」ではなく、利益をどのタイミングで確定させるかを決める、れっきとした税務戦略のひとつです。

繁忙期の「直後」を狙うのが基本

決算月を考えるうえで最も重要なのが、自社の売上の波を把握することです。

たとえば、夏にイベントが集中するウェディング系の会社や、年末に駆け込み需要が来るIT系の会社なら、繁忙期は10〜12月あたりになります。この場合、決算月を12月や1月にしてしまうと、売上が積み上がったタイミングで帳簿を締めることになり、利益が膨らんだまま課税されます。

一方、決算月を繁忙期の直後、つまり2〜3月に設定すると何が起きるか。繁忙期で上がった売上を見届けながら、決算月に向けて広告費・人件費・設備投資などの経費を計画的に使い切れるんです。結果として、課税所得を圧縮しやすくなります。

この差が、年間で100万円を超えることも珍しくありません。税率を30%と仮定すると、課税所得が300万円違えば、それだけで90万円の納税差になります。

設立初年度だけは、もうひとつの視点が必要

決算月を考えるうえで、設立初年度だけは特別なルールがあります。それが消費税の免税期間です。

原則として、設立から2年間は消費税が免除されます(資本金1,000万円未満の場合)。ただし正確には「2事業年度」が免除される仕組みなので、設立月から最初の決算月までの期間が短いと、その1期目がすぐに終わってしまい、免税期間を無駄に消費することになります。

たとえば、4月に設立して決算月を6月にすると、初年度はわずか3ヶ月で終わります。翌期も1年ありますが、実質的に免税メリットを享受できる期間が短くなります。

対して、決算月を3月に設定すれば、設立から最初の決算まで約12ヶ月あり、その後もう1期フルで免税を受けられます。この差で、数十万円〜100万円近い消費税の差が生まれることがあります。

変更は「できる」が、コストがかかる

「じゃあ今から決算月を変えればいいですか?」とよく聞かれます。

変更自体は株主総会の決議と登記手続きで可能ですが、変更した事業年度が短くなる・税務申告がずれるなど、想定外のコストや手間が発生します。また、変更のタイミングによっては節税効果が薄れるケースもあります。だからこそ、設立時に一度だけ、しっかり考えることが何よりも大切です。

決算月を決めるときの3つの視点

整理すると、決算月を選ぶときに考えるべきポイントは次の3つです。

  • 自社の繁忙期はいつか(売上の山の直後を狙う)
  • 設立月はいつか(消費税免税を最大限活用できる月を選ぶ)
  • 経費の使い方に余裕があるか(決算前に投資判断できる期間を確保する)

この3つを踏まえると、「3月や12月が正解」という会社もあれば、「6月や9月が最適」という会社もあります。正解は業種・規模・設立タイミングによって変わります。

まだ会社を設立していない方、あるいは「決算月、なんとなく決めたな…」と思い当たる社長は、一度税理士に相談してみてください。変更が難しくても、今後の事業年度の使い方を見直すだけで節税の余地は必ずあります。今期の決算前に、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。