先日、ある会社の社長から「うちの税理士、経費の提案をあまりしてくれないんですよね」という相談を受けました。

話を聞いてみると、月次の試算表を確認して終わり、というスタイル。節税のアドバイスはほぼなし。でも、その社長の事業内容を詳しく見てみると、「あれ、これ経費にしてないの?」という項目がいくつも出てきたんです。

「そういうものだと思っていた」「経費になるとは知らなかった」——そういう支出が、法人の場合けっこうあります。今回は、社長が見落としやすい経費を5つ紹介します。正しく計上するだけで、年間60万円以上の経費増加も珍しくありません。実効税率30%なら、それだけで約18万円の節税です。

自宅の一部を仕事場として使っている

在宅で仕事をしている社長は多いと思いますが、自宅の家賃・光熱費を会社に按分して計上できます。

たとえば80平米のマンションのうち20平米を業務用に使っているなら、使用割合は25%です。月家賃が20万円なら月5万円、年間で60万円が法人経費になる計算です。

ポイントは「業務で使っている実態と根拠を残すこと」。間取り図や使用時間のメモがあれば、税務調査でも説明できます。自宅兼事務所の社長は、まずここを確認してみてください。

スマホ・パソコン代の按分

個人所有のスマホやPCを業務でも使っているなら、使用割合に応じて会社に請求できます。完全に業務専用なら100%、プライベートとの兼用なら50〜70%程度が目安です。

月々の通信費や本体の減価償却費を按分するだけで、年間で数万円単位の経費追加につながります。「なぜこの割合か」という説明がつくよう、業務使用の実態を簡単に記録しておくのが賢いやり方です。

1人1万円以下の飲食費(2024年に上限が変わりました)

これは見逃している社長が本当に多い項目です。取引先との会食や社内の打ち合わせ飲食費は、一定条件を満たせば「交際費」ではなく全額損金として計上できます。

2024年の税制改正で、この基準が「1人あたり5,000円以下」から「10,000円以下」に引き上げられました。少人数のランチ接待や打ち合わせ後の食事でも、1人1万円以内に収まっていれば全額損金です。

必要な対応は、領収書に参加者全員の名前と人数を書くだけ。この一手間で経費化できるかどうかが変わります。

役員の健康診断費用

社長自身の健康診断、会社の経費にしていますか?

役員の定期健康診断は福利厚生費として法人経費になります。人間ドックも、「全役員に同じ機会を提供する」という規程が社内にあれば経費化が可能です。年に1回の人間ドックで5〜10万円かかることを考えると、個人で払うより法人で落とすほうが明らかにお得です。

従業員の健康診断費用をすでに会社負担にしているなら、役員分も同じ扱いにする仕組みを作っておきましょう。

業務に関連するセミナー・書籍・サブスクリプション

勉強のための支出は経費になります。でも「個人的な出費かな」と思いがちで、見落としやすい項目でもあります。

オンラインセミナーの受講料、ビジネス書、業界情報のサブスク(日経電子版や専門誌など)、資格取得費用——業務との関連性が説明できるものはすべて経費です。「業務に関係するから購入した」という事実を領収書の裏や購入メモで残しておくと、後から説明が楽になります。

合計するとどれだけ変わるか

これら5つを整理すると、会社によっては年間60万円以上の経費増加になることがあります。

  • 自宅按分(月5万円×12ヶ月):年60万円
  • スマホ・PC按分(月1〜2万円):年12〜24万円
  • 飲食費の見直し:状況次第で数万〜数十万円
  • 役員健康診断費:年5〜10万円
  • セミナー・書籍・サブスク:年2〜5万円

実効税率30%で計算すると、節税額は18〜30万円以上。毎年コツコツ積み上げれば、10年で300万円近い差になります。

経費化で大切なのは「記録を残す習慣」

経費化のポイントは難しくありません。「業務との関係を説明できるかどうか」——この1点です。

税務調査で否認されるのは、ほとんどが「記録がなかった」「説明できなかった」というケースです。逆に言えば、根拠を用意しておけば大半の経費は守れます。按分割合の計算根拠、飲食費の参加者メモ、セミナーの受講証明——これらをルーティンとして残す習慣をつけるだけで、経費の質は大きく変わります。

もし顧問税理士がいるなら、「我が社で見落としている経費はないか」と一度聞いてみてください。その一言で、今期の税額が変わるかもしれません。まだ按分の整理ができていないなら、今期の決算前に動き始めるのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。