先日、同じ経営者仲間の集まりで、こんな話が出ました。

「退職金って、自分で積み立てておかないといけないの?」

実はこれ、意外と知らない社長が多いんです。会社員なら会社が退職金を準備してくれますが、中小企業の社長は自分で考えないと、気づいたときには何も残っていない——そんなケースが珍しくありません。

今回は、そんな社長にぜひ知ってほしい小規模企業共済という制度について、実際に使うとどれだけトクになるか、具体的に掘り下げてみます。

掛金がまるごと所得控除になる

小規模企業共済の最大の特徴は、毎月の掛金が全額、所得控除の対象になることです。

月に7万円、つまり年間84万円まで積み立てられるのですが、この84万円がそのまま課税所得から差し引かれます。所得税と住民税を合わせると、実質的に30〜40%引きで積み立てているのと同じ効果が得られます。

年収が一定以上ある社長なら、1年で25万〜33万円ほどの節税になる計算です。積み立てながら節税できるという、一石二鳥の仕組みといえます。

受け取るときも税負担が驚くほど軽い

「積み立てるときだけでなく、受け取るときも優遇されるの?」と思った方、正解です。

小規模企業共済の受取は、退職所得として扱われます。退職所得には「退職所得控除」という大きな控除枠があって、勤続年数が長いほど控除額が増えます。

20年間積み立てて、1,000万円を受け取るケースを考えてみましょう。退職所得控除を差し引くと、実際に課税される金額はぐっと小さくなります。さらに退職所得は2分の1課税が適用されるため、同じ1,000万円でも、普通の給与として受け取るよりはるかに税負担が軽くなるのです。

積み立て時の節税+受取時の節税、この二段構えが、小規模企業共済の本当の強みです。

唯一の弱点と、それでもトクな理由

「いいことばかりじゃないでしょ?」と疑いたくなる気持ち、わかります。

正直に言うと、弱点が一つあります。法人の損金にはならないという点です。会社の経費として計上できないので、法人税の節税には直接つながりません。

ただ、これは個人(役員報酬を受け取っている社長本人)の節税効果で十分カバーできます。月7万円を積み立てて年間30万円以上節税できるなら、「法人の損金にならなくてもいい」と判断する社長がほとんどです。

法人と個人、両方の税負担を合わせて最適化するという視点で考えると、小規模企業共済は非常に使い勝手のいい制度です。

加入前に確認しておきたいこと

小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主が加入できる制度で、国(中小機構)が運営しています。元本割れリスクが比較的低く、途中解約しない限りは堅実に積み立てられます。

ただし、途中解約には注意が必要です。加入後20年未満で任意解約すると、受取額が掛金総額を下回る可能性があります。長期で運用することを前提に、資金計画に組み込むのが基本です。

月々の掛金は1,000円から7万円の間で自由に設定でき、年に1回変更も可能です。最初は少額から始めて、業績に応じて増額するという使い方もできます。

今すぐシミュレーションを

退職金の話は「まだ先でいい」と後回しにしがちですが、早く始めるほど控除枠を長く使えて有利になります。

まだ小規模企業共済に加入していない社長は、今期の役員報酬とあわせて顧問税理士にシミュレーションを依頼してみてください。「月いくら積み立てると、何年後にいくら受け取れて、トータルでどれだけ節税になるか」を数字で見ると、加入への決断がぐっと早くなります。

個人口座にただ貯めているお金があるなら、その一部を小規模企業共済に回すだけで、節税効果はすぐに出てきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。