先日、年商2億円の製造業を営む社長から、こんな相談を受けました。「個人名義でマンションを買ったんですが、確定申告してみたら思っていたより税金がすごくて……」というものでした。
話を聞いてみると、ローンの金利はほとんど経費にならず、修繕費も自己負担。不動産所得の利益には総合課税が乗っかり、気づけば給与所得と合算されて税率が跳ね上がっていた、というオチでした。
「それ、法人で買っていたら話が全然違いましたよ」とお伝えしたときの、社長の表情は今でも忘れられません。
払う費用がほぼ全部、法人なら経費になる
法人で不動産を購入した場合、ローンの金利・固定資産税・管理費・修繕費——これらがすべて損金(経費)として計上できます。個人の場合、利子は不動産所得の計算に使えても、法人ほど柔軟ではなく、節税効果は限定的です。
法人であれば、不動産に関連する支出を会社の費用として落とせるため、課税所得を直接圧縮できます。「払ったお金が経費になる」のは当たり前のようで、個人と法人では天と地ほどの差があります。利益が出ている会社ほど、この差は大きく効いてきます。
「見えない経費」減価償却の威力
さらに強力なのが、減価償却です。たとえば1億円の建物を購入した場合、耐用年数に応じて毎年数百万円を経費として計上できます。実際にはお金が出ていかないのに、帳簿上は赤字になる——これが法人不動産節税の核心部分です。
キャッシュは手元に残りながら、税務上の利益を圧縮できる。これは「実態のある経費」ではなく、あくまで会計上の処理ですが、法人税の負担を大幅に減らす効果があります。決算前に利益が膨らんでいる会社の社長にとっては、非常に有効な対策になります。
自分が住んでも経費になる——役員社宅という選択肢
もう一つ見逃せないのが、「役員社宅」の活用です。法人で購入した物件に自分(役員)が居住する場合、税法上の算式にもとづいた適切な賃料設定をすることで、家賃相当額の約80〜90%を法人の経費にできます。
さらに、通常であれば現物給与として課税される住居費が、社宅スキームを正しく使えば給与課税を回避できます。個人で家賃を払うより、法人が社宅として提供するほうが、手取りベースで大きく得になるケースが多いのです。
ただし、賃料の計算は税法上の算式に従う必要があり、設定を誤ると「給与」と認定されて全額否認されるリスクがあります。このスキームは「やり方次第」の部分が多いため、必ず税理士と一緒に設計することが前提です。
個人から法人への「移転コスト」には要注意
法人で不動産を保有するメリットを最大限に活かすには、購入前の段階から法人スキームを設計しておく必要があります。個人で買ってから「やっぱり法人に移したい」となると、不動産取得税や登記費用が再度かかり、移転コストが相当な額になります。
「次の物件は法人で」と考えているなら、今の段階から顧問税理士と戦略を練っておくことを強くおすすめします。不動産の購入は一度決断すると簡単には戻れない。だからこそ、事前の設計が節税の成否を分けます。
今期の利益が膨らんできた社長は、ぜひ一度「法人での不動産取得」という選択肢を、顧問の税理士に相談してみてください。個人で買う前の一言が、長期的に見て何百万円もの差を生むことがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。