先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。

「今期も利益が出過ぎてしまって。このままだと法人税だけで1,000万円近くなりそうで、正直しんどいんですよね」

売上が伸びることは喜ばしいことです。でも、それに比例して増える税負担に毎年頭を抱えているオーナー社長は、実は少なくありません。そんな方に今日お伝えしたいのが、「中古不動産の減価償却を使った節税」という方法です。

不動産を「買う」だけで経費が生まれる理由

不動産を購入すると、その建物部分は「減価償却費」として毎年少しずつ経費に計上できます。これは現金が出ていかなくても、帳簿上は経費として認められる、非常に珍しい仕組みです。

つまり、手元に物件が残っているにもかかわらず、課税所得だけをしっかり圧縮できるという、税務上かなり有利な構造になっているんです。

ここで重要になるのが「築古の木造物件」という選択です。

なぜ「築古の木造」がポイントなのか

木造建築の法定耐用年数は22年とされています。ただし、すでに耐用年数を超えた築古物件の場合、残存耐用年数の計算式によって最短4年で建物価格の全額を償却できるケースがあります。

たとえば、2,000万円の中古木造アパートをこの条件で購入したとしましょう。単純計算で、年間500万円を4年間にわたって経費として計上できることになります。

法人税率が約30%だとすれば、500万円の経費計上によって年間150〜200万円の節税効果が生まれる計算です。4年間続ければ、累計で600〜800万円規模の節税になります。

冒頭の社長も、顧問税理士のアドバイスでこの方法を実践し、毎年の税負担を大幅に圧縮することに成功しました。

損益通算という「もう一つの武器」

この節税スキームで欠かせないのが「損益通算」という考え方です。

法人の場合、不動産事業で発生した減価償却費の損失を、本業の利益と合算して相殺できます。製造業でどれだけ利益が出ていても、不動産側で大きな経費が立てば、課税所得そのものをぐっと小さくできるわけです。

個人ではなく法人で不動産を保有することで、この損益通算がよりシンプルに使える点も、オーナー社長にとっての大きなメリットです。

注意しておきたい3つのポイント

ただし、この節税法には「うまく機能する条件」があります。実践する前に、以下の点はきちんと頭に入れておいてください。

まず、償却が終わった後の出口戦略です。4年間で償却が終わると経費計上はなくなります。その後に物件を売却する場合、売却益に課税されるリスクもあるため、保有し続けるか、いつ・どのように売るかを事前に設計しておく必要があります。

次に、物件の収益性です。節税目的で赤字物件を持ち続けると、税務上の問題だけでなく、キャッシュフローが悪化するリスクがあります。節税と実収益のバランスを見極めることが大切です。

そして、税務当局の目線です。あまりにも節税目的が前面に出た取引は、税務調査の対象になることもあります。物件取得の経緯や事業との関連性を、きちんと説明できる状態にしておきましょう。

「今すぐできるか」より「正しく設計できるか」

このスキームは、正しく設計すれば非常に強力な節税手段です。一方で、物件選びや取得タイミング、出口戦略を誤ると、むしろ税負担が増えてしまうケースもあります。

毎年の決算前に「また税金が高い…」と嘆くだけではもったいないです。利益が出ている今こそ、不動産を活用した節税設計を税理士と一緒に検討してみる価値は十分あります。

まずは「今期の利益がいくら出そうか」を早めに把握して、決算の2〜3ヶ月前には動き始めることをおすすめします。動き出しが遅いと、せっかくの節税チャンスを逃してしまいますから。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。