先日、飲食チェーンを経営する社長からこんな相談を受けました。「自分名義でマンションを買って家賃収入を得てるんですが、税金がえぐくて……」。話を聞いてみると、所得税と住民税を合わせて50%近い税率で課税されていたんです。
実はこのケース、法人で買っていれば話がまったく変わっていました。同じ不動産でも、「誰が買うか」によって税負担が激変する——これが不動産節税の核心です。
個人で買うと、最大55%が税金に消える
個人で不動産を持って家賃収入を得ると、「不動産所得」として他の収入と合算されます。給与や事業所得がすでに高い社長の場合、あっという間に所得税の最高税率45%+住民税10%、合計55%の壁にぶつかります。
1,000万円の家賃収入があっても、550万円が税金で消えるイメージです。一生懸命働いて得た収益が、半分以上なくなってしまう。これが個人購入の最大の落とし穴です。
法人で買うと、実効税率が約30%まで下がる
一方、法人で不動産を購入した場合、その収益は法人の利益として計上されます。中小法人の実効税率はおおむね30%前後。個人の最高税率55%と比べると、その差は25ポイント以上にもなります。
仮に年間500万円の不動産所得があるとすると、個人なら275万円が税金に、法人なら150万円程度に収まる計算です。この差が積み重なれば、10年で1,000万円以上の違いになることも珍しくありません。
減価償却という「合法的な経費」が使える
法人購入の強みはそれだけではありません。建物を購入すると、その取得価額を毎年少しずつ経費として計上できる「減価償却」が使えます。
例えば1億円の物件(うち建物部分が6,000万円、耐用年数30年)であれば、毎年200万円を経費として落とせる計算になります。実際に現金が出ていくわけではないのに、帳簿上は経費が積み上がる——これが減価償却の妙味です。
実効税率30%で計算すると、この減価償却だけで年間60万円の節税効果。10年で600万円です。キャッシュは手元に残したまま税金を減らせる、非常に強力な手法です。
修繕費・ローン利息・管理費も全部経費になる
減価償却以外にも、法人で不動産を持つメリットはたくさんあります。修繕費、ローンの支払利息、管理会社への手数料、火災保険料——これらすべてが法人の経費として計上できます。
個人で不動産所得の計算をするときも一部経費には入りますが、法人の場合はそれに加えて、役員報酬や社宅スキームとの組み合わせでさらなる節税の余地が生まれます。経費の「重ね技」が使えるのが法人ならではの強みです。
ただし、注意点もある
ここまで聞くと「今すぐ法人で買いたい!」となるかもしれませんが、いくつか頭に入れておくべき点もあります。
まず、不動産を法人に移す際(個人から法人へ売却する形になる)は、譲渡所得税が発生するケースがあります。すでに個人で持っている物件を今から法人に移すのは、思ったよりコストがかかることも。
また、法人で不動産を購入すると、その法人の決算書に不動産ローンが計上されます。メインバンクからの融資審査に影響が出ることもあるため、資金調達の観点からも事前に確認が必要です。
さらに、出口戦略——つまり売却時の税負担——も個人と法人では異なります。個人の場合、長期譲渡所得なら約20%で済むケースもあり、一概に「法人が得」とは言えない局面もあります。
結局、どうすればいいのか
一番シンプルな答えは、「既存の法人で、これから購入する物件から法人名義にしていく」ことです。新たに不動産管理法人を設立するケースも多く、規模と目的に応じて最適な形は変わります。
大切なのは、買う前に動くこと。購入後では選択肢が狭まります。1億円の物件を買う前に1時間税理士と話すだけで、10年間で数百万円の差がつくこともある。それくらい「誰名義で買うか」は重要な意思決定です。
もし今、個人名義で不動産を購入しようとしているなら、一度立ち止まって顧問税理士に「法人での購入との比較試算をしてほしい」と伝えてみてください。その一言が、思いがけない節税のきっかけになるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。