先日、不動産投資を始めたばかりの社長から、こんな相談を受けました。
「同じくらいの規模の物件を買ったのに、知り合いの社長は初年度で1,000万円以上経費にできたって言うんです。なんで自分はこんなに少ないんでしょう?」
話を聞いてみると、その社長が購入したのは築10年の鉄筋コンクリート造のマンション。一方、知り合いの社長が買ったのは築50年超の木造アパートでした。この「築年数の差」だけで、税負担にこれだけの差が生まれていたのです。
鍵は「耐用年数の短縮」にある
不動産を購入すると、建物の取得費用を「減価償却」として毎年経費に計上できます。このとき重要なのが、減価償却を行う期間——「耐用年数」です。
木造建物の法定耐用年数は22年。ところが、すでに築22年を超えた木造物件を購入すると、残りの耐用年数は「4年」に短縮されます。RC造や重量鉄骨造の法定耐用年数は47年で、築47年を超えていれば同様に短縮計算が適用されます。
耐用年数が短くなるということは、同じ取得費用を「より短い期間」で経費化できるということ。これが築古物件節税の本質です。
数字で見ると、その威力がわかる
具体例で確認してみましょう。1億円の築古木造物件(建物部分1億円と仮定)を購入した場合、耐用年数は4年に短縮されます。すると、毎年2,500万円ずつ減価償却が可能になります。
法人税率を約30%で試算すると、初年度だけで750万円近い節税効果です。これが4年間続くわけですから、トータルの経費計上額は1億円。取得費用をまるごと経費化できる計算になります。
新築物件でRC造を購入した場合、同じ1億円でも47年かけて少しずつしか計上できません。初年度の節税効果でいえば、築古物件との差は歴然です。
必ず確認すべき「建物割合」の罠
ここで多くの社長が見落とすポイントがあります。不動産の取得費用のうち、土地は減価償却できません。
1億円で物件を取得しても、そのうち土地代が7,000万円なら、減価償却の対象は建物代の3,000万円だけです。同じ「1億円物件」でも、土地と建物の割合しだいで節税効果はまるで変わります。
固定資産税評価額や不動産鑑定評価をもとに、建物割合をきちんと把握してから購入判断をするのが鉄則です。「なんとなく半々」という認識のまま購入すると、期待していた節税効果が出ないことがあります。
個人と法人では、使い方が違う
もう一つ重要なのが、個人と法人で減価償却の取り扱いが異なる点です。
個人(所得税)の場合は「強制償却」といって、毎年必ず定額を計上しなければなりません。対して法人は「任意償却」なので、利益が多い年に多く計上するなど、タイミングをコントロールできます。
節税の自由度という面では法人取得のほうが有利なケースが多いですが、不動産所得の損益通算ルールや融資条件、出口(売却時の税負担)まで含めると、判断要素は複数あります。一概に「法人が正解」とは言い切れないのが正直なところです。
「買ったあと」まで見越して動く
築古物件の短期減価償却は、うまく活用すれば初年度から数百万円〜1,000万円単位の節税が狙える強力な手法です。ただし、節税は「購入」がゴールではありません。
減価償却が終わったあとの利益増加、売却時の譲渡所得への課税、法人・個人間の資金移動——これらをセットで試算してはじめて、本当の効果が見えてきます。
「節税になると聞いたから」と物件だけ先に決めてしまうのではなく、自社の利益水準や資金繰りとあわせて、具体的な物件を持ち込んで顧問税理士に相談する。それが、後悔しない不動産節税の進め方です。今期中に一度、シミュレーションしてみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。