先日、都内で飲食店を数店舗経営している社長から、こんな話を聞きました。
「税理士に勧められて区分マンションを買ったんだけど、思ったより節税になってなくて…」
よくある話です。不動産投資は節税になる、というイメージはすっかり定着しましたが、どんな物件でも同じように節税できる、というわけではありません。同じ1億円を投じても、物件の種類によって年間の節税効果が3倍以上変わることがあるのです。
節税の仕組みはシンプル、でも「比率」が全てを決める
不動産投資で節税ができる理由は、ひとつの言葉に集約されます。**「減価償却」**です。
建物は時間とともに劣化するという考え方に基づき、購入価格の一部を毎年経費として計上できる制度です。この「毎年経費にできる金額」が大きければ大きいほど、利益が圧縮され、法人税が減ります。
ここで重要になるのが、「土地と建物の比率」です。
土地は劣化しないので、減価償却の対象にはなりません。減価償却できるのは建物部分だけ。つまり、購入価格のうち建物の割合が高い物件ほど、節税効果が大きくなるという構造になっています。
区分マンションで節税が「薄い」理由
都心の区分マンション、たとえば1億円のタワマンの一室を買ったとしましょう。
この場合、土地(敷地)は建物全体のうちの一室分しか割り当てられないにもかかわらず、都心の地価は非常に高い。結果として、1億円のうち建物に割り当てられる金額は思いのほか少なくなります。
仮に建物部分が2,000万円だとすると、鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年ですから、年間の減価償却費はおよそ40〜50万円程度。法人税率が30%だとしても、節税額は年間15万円前後にとどまります。
1億円を動かして、年15万円の節税。正直、割に合わないと感じる方も多いでしょう。それが現実です。
一棟木造アパートが「別格」な理由
一方、地方や郊外の一棟木造アパート(1億円)を法人で購入した場合はどうでしょう。
木造アパートは土地の割合が低く、建物部分が購入価格の6〜7割を占めることも珍しくありません。建物が6,500万円だとして、木造の法定耐用年数は22年。計算すると、年間の減価償却費は約300万円になります。
法人税率30%で試算すれば、年間の節税効果は90万円前後。同じ1億円の投資で、区分マンションの6倍以上になるケースも出てきます。
ここに「木造・築古」という条件が加わると、さらに短期間での減価償却が可能になり、節税の即効性が増します。法定耐用年数を超えた木造物件は、最短4年で全額を経費化できるケースもあるため、高収益な法人の「利益の受け皿」として使われることも多いです。
「節税になると言われた物件」が逆効果になるケース
ただし、注意が必要な落とし穴もあります。
ひとつは、減価償却が終わった後の税負担増です。経費計上できる期間が終われば、家賃収入がそのまま利益になります。出口(売却)のタイミングや、売却時の税率まで含めて試算しないと、トータルで損をすることもあります。
もうひとつは、スキームの設計ミスです。個人で買うのか法人で買うのか、どの法人名義にするのか、融資の組み方はどうするか。これらを間違えると、節税どころか余分なコストが増えるだけになります。
「節税になると聞いたから買った」という動機だけで物件を選ぶのは危険です。必ず購入前に税理士と具体的な数字で試算することをおすすめします。
数字で動く前に「比較」を習慣にしてほしい
不動産を使った節税は、正しく設計すれば非常に強力な手段です。
ただ、「不動産=節税」という雑な理解のまま進むと、冒頭の社長のように「思ったよりならなかった」という結果になりかねません。
物件を見るとき、ぜひ「土地と建物の比率はどうか」「年間いくら減価償却できるか」「法人税率と掛け合わせると節税額はいくらか」を最初に確認する習慣をつけてみてください。それだけで、物件選びの目線が180度変わるはずです。
もし今期の利益が大きく、節税の選択肢を探しているなら、区分マンションではなく一棟木造アパートを選択肢に加えてみる価値は十分あります。顧問税理士に「一棟アパートでシミュレーションしてほしい」と一言伝えるだけで、話が大きく動くかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。