先日、ある製造業の社長から連絡が来ました。「決算前に税理士から『企業版ふるさと納税、もうやってますよね?』と聞かれて、初めてその存在を知りました」と。

年商5億円、利益もしっかり出ている会社です。試算してみたら、その期だけで約150万円の節税余地があったことが分かりました。でも申請の期限が迫っていて、結局その期は手をつけられなかった。

こういう「知らなかった損」は本当にもったいない。今回は、企業版ふるさと納税でよくある失敗を3つ、ランキング形式でお伝えします。

第3位:上限を把握せず、少額しか寄付していない

企業版ふるさと納税は、寄付額の約9割が実質的な税負担軽減につながります。ただし上限の計算が少し複雑で、法人税・法人住民税・法人事業税の合計の約60%が寄付の上限ラインになります。

これを把握していないと、節税効果を大幅に取りこぼすことになります。たとえば法人税等が年間500万円の会社なら、理論上の上限は300万円前後。でも「なんとなく50万円だけ」と少額で済ませている社長が少なくありません。

決算前に顧問税理士と一緒に上限を試算しておくだけで、数十万円単位で結果が変わってきます。まず「自社はいくらまで寄付できるか」を把握することが出発点です。

第2位:「返礼品がない=メリットなし」と誤解している

個人版のふるさと納税といえば、カニや米が届くイメージがあります。企業版には返礼品がありません。これを聞いて「じゃあ意味ないじゃないか」と思った社長、少し待ってください。

返礼品の代わりに得られるのは、地域との連携やPR効果です。寄付先の自治体の広報誌やウェブサイトに企業名が掲載されることもあります。観光振興・子育て支援・地域産業育成など、自社のブランドイメージと親和性の高いプロジェクトを選ぶこともできます。

CSR(企業の社会的責任)活動として活用している会社も増えています。節税しながら社会貢献もできる、という一石二鳥の使い方です。「うちは地方に縁がない」という会社でも、社員の出身地の自治体に寄付するなど、使い方はさまざまです。

第1位:そもそも制度を知らず、一度も使っていない

これが圧倒的に多いパターンです。「大企業がやるものでしょ?」という思い込みも根強い。でも実際は、中小企業でも十分に活用できる制度です。

2020年に制度が大幅に強化されました。以前は寄付額の約30%が税額控除の対象でしたが、改正後は約60%にまで拡大されています。この変化が大きい。

仮に年商3億円規模の会社で、法人税等の納付額が年間200万円あるとすると、上限の寄付額は120万円前後。その寄付に対して約108万円分の税額控除が得られる計算です(控除割合は税目によって異なります)。実質的な自己負担がほぼゼロに近い形で、地域貢献ができるのです。

「うちの規模でも本当に使えるの?」と感じたなら、まず顧問税理士に試算を依頼してみてください。一度シミュレーションしてみると、思っていたより節税効果が大きいことに気づくはずです。

動くなら今期中に、が鉄則

企業版ふるさと納税の寄付は、各事業年度末までに完了している必要があります。「決算が終わってから考えよう」では遅い。利益が出ている事業年度内に寄付を実行しないと、その期の節税効果はゼロになります。

寄付先の自治体との調整や手続きにある程度の時間がかかるため、決算3〜4ヶ月前から動き出すのが理想です。まだ今期の決算が残っているなら、今すぐ動き出すタイミングです。

一度仕組みを理解してしまえば、翌年以降は毎年スムーズに活用できます。年間100万円単位の節税が習慣になると、経営にもかなりの余裕が生まれます。「知っているけど後回しにしていた」という方こそ、今期中に一度試算だけでもしてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。