先日、顧問先の社長からこんな連絡が来ました。「3年前に大赤字を出した年があったんですが、あの欠損金ってもう使えないですよね?」
結論から言うと、まだ使える可能性が高いです。そして、こういう誤解をしている社長は、思っている以上にたくさんいます。
今回は、繰越欠損金をめぐって社長がやりがちなミスを3つ、正直にお伝えします。どれか一つでも当てはまったら、今すぐ税理士に確認してください。損している金額が、想像より大きいかもしれません。
3位:「もう使えない」と思って諦めている
繰越欠損金とは、赤字(欠損)が出た年の損失を、翌年以降の黒字と相殺できる制度です。中小企業の場合、この欠損金は最大10年間繰り越して使えます。
「5年前の赤字は関係ない」「3年も前のことだから」と思っていた社長、少し待ってください。2012年度の税制改正で、繰越期間は9年から10年に延長されています。意外と長い期間、使える権利が残っているんです。
ただし、欠損金の繰越には青色申告であることが必須条件。白色申告の法人は対象外になります。この点だけ先に確認しておいてください。
2位:黒字の年に使い忘れる
これが最もやっかいなミスです。繰越欠損金は、黒字の年に自動的に適用されません。
申告書のある様式に、前年以前の欠損金額を記載して初めて、今年の利益と相殺できる仕組みになっています。つまり、記載を忘れれば、その年は欠損金を使わずに法人税をフルで払うことになる。
「自動で計算されるんじゃないの?」と思っている社長が多いのですが、違います。税務ソフトで処理していたとしても、前の会計事務所から引き継いだデータが正確に反映されているかどうか、確認が必要です。
繰越欠損金が1,000万円残っていたとして、法人税率が約25%だとすれば、使えれば250万円の税負担が減る計算です。それを申告書への記載ミスで捨てているとしたら、もったいないどころではありません。
1位:そもそも欠損金を「作る」発想がない
繰越欠損金を活用するためには、まず欠損金が必要です。当たり前のように聞こえますが、「欠損金は悪いもの」「赤字になると銀行に怒られる」という意識から、税務上の損失をわざわざ計上しないケースが少なくありません。
たとえば、こんな手法が合法的に欠損金を生み出します。
- 棚卸資産の評価損: 陳腐化した在庫や時価が大幅に下落した商品は、一定の条件で評価損として損金算入できます。
- 不良債権の貸倒損失: 回収できない売掛金を、適切な手続きを踏んで損金処理する。
- 少額減価償却: 30万円未満の備品は、中小企業の特例を使って即時全額損金にできます。
こうして今期に計上した損失は、来期以降に黒字が出たときの節税原資になります。「赤字を作って次の黒字に備える」という発想は、決算対策の中でも上位に入る手法です。
ただし、無理な経費計上や架空の損失計上は当然アウトです。あくまで実態のある取引に基づく損金計上である必要があります。
今期の決算で確認してほしいこと
繰越欠損金は、知っているかどうかだけで数百万円単位の差が出ることがある制度です。
まず、過去10年分の申告書を引っ張り出して、欠損金がどれだけ残っているか確認してみてください。次に、今期の決算で合法的に損失を計上できる項目がないか、税理士と一緒にリストアップする。この二つだけでも、今期の着地がかなり変わることがあります。
「うちは毎年黒字だから関係ない」と思っている社長こそ、欠損金を作る余地がないか見直してみてほしいです。黒字の会社ほど、合法的な損失計上の余地を残したまま高い税金を払い続けているケースが多いので。
決算は終わってからでは手遅れになることが多い。気になることがあれば、決算締め前に税理士に相談するのが一番です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。