先日、製造業を営む田中社長(仮名)からこんな話を聞きました。
「決算の3週間前に500万円の旋盤を買ったんですが、税理士に相談したら税金が150万円以上減ったんですよ。設備を買っただけなのに、なんでそんなに変わるんですか?」
最初は半信半疑でしたが、話を聞くと、ちゃんとした制度をきちんと活用した結果でした。今日はその仕組みを、できるだけわかりやすくお伝えします。
「経費になる」と「税額が減る」は全然違う
機械や設備を買えば当然、経費として計上できます。でも多くの社長が見落としているのが、「税額控除」という別の恩恵です。
経費計上は「利益を減らす」効果があります。一方、税額控除は「計算された税金そのものを直接引く」効果があります。この違い、かなり大きいんです。
田中社長が使ったのは「中小企業投資促進税制」という制度。対象となる設備投資をした年に、その投資額の一定割合を税額から直接差し引けるというものです。
500万円の機械で、税金がどう変わったか
田中社長の会社は資本金が1000万円。この場合、投資額の**10%**が税額控除の対象になります。500万円の旋盤なら、500万円 × 10% = 50万円をそのまま税額から引けるわけです。
さらに田中社長が組み合わせたのが「即時償却」です。通常、機械は耐用年数にわたって少しずつ減価償却しますが、即時償却を使うと購入した年に全額を費用として落とせます。500万円をまるごと今期の利益から差し引けるので、課税所得がグッと圧縮されます。
税率を30%と仮定すれば、500万円 × 30% = 150万円分の税負担が減る計算です。これに税額控除の50万円が加わり、トータルで見ると非常に大きな節税効果になりました。
この制度、どんな設備が対象なの?
「うちは製造業じゃないから関係ない」と思った方、ちょっと待ってください。対象になる設備の範囲は、意外と広いんです。
主な対象は以下のとおりです。
- 機械・装置(1台160万円以上のもの)
- 工具・器具・備品(1台120万円以上のもの)
- ソフトウェア(70万円以上のもの)
- 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
製造業だけでなく、業務用ソフトウェアを導入するIT系の会社や、大型車両を使う運送業なども対象になりえます。「うちには関係ない」と決めつける前に、一度確認する価値があります。
税額控除率は資本金で変わる
この制度のポイントのひとつが、資本金の額によって控除率が変わることです。
資本金が3000万円以下の中小企業は税額控除率10%、資本金が3000万円超1億円以下の場合は**7%**となります。多くの中小企業は10%の恩恵を受けられるので、積極的に活用したい制度です。
なお、税額控除と即時償却はどちらか一方しか選べません。利益が十分に出ている年は税額控除、赤字リスクがある年は即時償却で利益を圧縮、というように状況に応じた使い分けが大切です。
決算直前でも間に合う? 気をつけたいこと
田中社長のように決算直前に動いた場合でも、その期中に設備を取得して事業に使用していれば対象になります。ただし、「買っただけで倉庫に眠っている」状態では認められないケースもあるので注意が必要です。
また、この制度には適用期限があります。現時点では令和7年3月31日までに取得したものが対象ですが、延長・改正される可能性もあるため、最新情報は必ず顧問税理士に確認してください。
手続き面では、確定申告書に必要な書類を添付して申告する必要があります。「買ったから自動的に適用される」わけではないので、ここも要注意です。
設備投資を「タイミング」で考える習慣を
どうせ買うなら、節税効果が最も高いタイミングで買う。これが賢い設備投資の考え方です。
「来期に買おうと思っていた機械、今期中に前倒しできないか?」と一度検討してみてください。利益が多く出た年に設備を取得すれば、その分の税負担をしっかり軽減できます。
もし今期の決算でまだ手を打てていないなら、今すぐ顧問税理士に「中小企業投資促進税制、うちは使えますか?」と聞いてみるのが最初の一歩です。知っているだけで、数十万〜数百万円の差が生まれる制度です。ぜひ活用してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。