先日、製造業を営む社長からこんな話を聞きました。
「うちも同業のA社も、ほぼ同じタイミングで機械を買ったのに、決算後にA社の社長が『税金がかなり安くなった』と言ってて。何が違ったんだろう」と。
答えは、使った制度が違った、それだけです。
「減価償却」だけで終わらせていませんか?
設備投資をしたとき、多くの会社は「減価償却で毎年少しずつ経費になる」という処理をします。もちろん間違いではありません。ただ、それだけで終わらせてしまうのは、少しもったいない。
中小企業には、税額控除という強力な手段が用意されています。経費を増やして利益を減らすのではなく、計算された税金そのものから、直接一定額を差し引けるしくみです。
経費算入と税額控除では、どちらが有利かは一目瞭然です。100万円の経費は、税率30%なら30万円分の節税効果。一方、30万円の税額控除は、そのまま30万円が税金から消えます。
「中小企業投資促進税制」とは何か
正式名称を聞くと少し身構えてしまいますが、内容はシンプルです。
対象となる設備を購入したとき、その取得価額の7%を法人税から直接控除できる制度です。資本金が3,000万円以下の中小企業であれば、控除率が**30%**に引き上げられます。
たとえば、300万円の機械を購入した場合。30%の税額控除が適用されると、90万円がそのまま税金から差し引かれます。普通に減価償却するだけでは、同じ300万円の投資でも年間にわずかずつしか経費化されない。この差は、決算時のキャッシュフローに直結します。
対象となる設備は主に以下のようなものです。
- 機械・装置(1台160万円以上)
- 工具・器具・備品(1台120万円以上)
- ソフトウェア(70万円以上)
- 貨物自動車、内航船舶など
業種や取得額によって細かい条件が異なりますが、製造業はもちろん、サービス業や小売業でも対象になるケースは多いです。
決算前に動くから意味がある
この制度の使い方で重要なのは、タイミングです。
税額控除は「その期に取得した設備」に対して適用されます。つまり、決算月の直前に購入した設備でも、その期の税金から控除できる。逆に言えば、決算期をまたいでしまうと、控除が1年後ろにずれます。
「そろそろ機械を入れ替えようか」と思っているなら、決算月から逆算して購入時期を考えるだけで、手元に残るお金が大きく変わってくるわけです。
設備投資の意思決定が先にあって、タイミングを税務に合わせる。このシンプルな順序を意識しているかどうかが、冒頭のA社との差でした。
一つだけ、必ず確認してほしいこと
ここまで読んで「うちも使えそう」と思った方に、一点だけお伝えしたいことがあります。
この制度、適用条件が細かいのです。取得価額の下限、対象設備の定義、税額控除の上限(当期税額の20%まで)、適用期限など、チェックすべき項目が複数あります。また、毎年度の税制改正によって内容が変わることもあります。
「条件を満たしていると思って申告したら、実は対象外だった」というケースも珍しくありません。節税のつもりが申告ミスになってしまっては本末転倒です。
必ず、顧問税理士に「うちの設備はこの制度の対象になりますか?」と確認してから進めてください。そのひと言が、90万円を守ることになります。
今期の決算、もう棚卸しはしましたか?
決算が近づいてから慌てて動いても、間に合わないことがあります。設備の発注から納品まで時間がかかるものも多いので、遅くとも決算の2〜3ヶ月前には税理士と一緒に投資計画を確認するのが理想です。
「どうせ買うなら、税金が安くなるタイミングで買う」。それだけのことで、年間の納税額は数十万〜数百万単位で変わります。まだ今期の設備投資について税理士と話していないなら、今すぐ相談の予約を入れることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。