先日、ある経営者からこんな質問を受けました。「会社にお金が貯まってきたので、法人口座で株式投資を始めようと思っているんですが、問題ないですよね?」

一瞬、返答に詰まりました。「問題ない」とは言えないからです。やり方によっては、個人で運用するより何十万円も多く税金を払う結果になりかねません。

法人の株式売買益にかかる税率、実は33%前後

個人で株式を売って利益が出た場合、税率は約20%(所得税15%+住民税5%)です。これは分離課税なので、他の所得がいくら多くても関係ありません。

ところが法人の場合は話が違います。株式の売買益は「益金」として法人の利益に上乗せされ、法人税・地方税を合わせた実効税率がおよそ33%前後かかってきます。

100万円の売買益を出したとき、個人なら手取りは約80万円。法人なら約67万円。その差は13万円以上です。「会社のお金で運用した方が効率的では?」と思っていた社長には、かなり衝撃的な数字ではないでしょうか。

それでも法人投資が圧倒的に有利になるケースがある

では法人での投資はすべてNGかというと、まったくそんなことはありません。むしろ、使い方によっては個人より格段に有利になります。

そのカギになるのが「受取配当等の益金不算入」という制度です。少し難しい名前ですが、要するに「配当金は法人税の対象にしなくていいよ」という特例です。

具体的な条件はこうなっています。

  • 発行済み株式の33%超を保有している場合:受け取った配当の**100%**が非課税
  • 発行済み株式の5%超・33%以下を保有している場合:受け取った配当の**50%**が非課税
  • 5%以下の保有の場合:**20%**が非課税(つまり80%は課税対象)

たとえば子会社や関連会社の株式をある程度まとめて持っていれば、そこから受け取る配当はほぼ丸ごと非課税になるわけです。これは個人にはない、法人ならではの強みです。

「売買」と「配当」で戦略を分ける

ここまで読んでいただければ、法人投資の基本戦略が見えてきます。

短期・中期の売買益狙いであれば、個人口座で運用する方が税負担は軽くなります。NISAの活用も含めて、個人で動かした方が賢い選択です。

一方で配当収入を長期的に積み上げる投資であれば、法人での運用が大きな武器になります。特に自社グループ内の株式や、長期保有を前提とした高配当株への投資は、法人で持つ意味があります。

「同じ投資でも、何を目的にするかで最適な器が変わる」というのが、この話のポイントです。

見落としがちなもう一つの注意点

法人で投資をするときに、もう一点だけ頭に入れておいてほしいことがあります。それは「含み益も決算に影響する場合がある」という点です。

上場株式を時価評価する場合、含み益が出ていれば期末に益金として計上されるケースがあります。「売っていないのに税金がかかる?」と驚く社長もいますが、保有する株式の種類や会計処理の方法によってはそういったことも起こり得ます。

投資を始める前に、自社の会計処理がどうなっているかを確認しておくことをお勧めします。

会社のお金を「どこに置くか」を戦略的に考える

会社に内部留保が積み上がってきたとき、「このお金を運用したい」という気持ちはよく理解できます。ただ、個人と法人では税のルールが根本的に違います。

売買益狙いなら個人、配当狙いなら法人。この基本を押さえるだけで、同じ投資行動でも手元に残るお金が大きく変わってきます。

もし今、「会社の余剰資金を何かに運用しようか」と考えているなら、まず税理士に「どの器で動かすのが有利か」を相談してみてください。戦略を決める前に一度立ち止まることで、将来の税負担が数十万円単位で変わることもあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。