先日、埼玉で製造業を営む田中社長(年商3億円)からこんな話を聞きました。
「税理士に言われるまで、まさかあれが経費になるとは思ってもみなかったよ」
その「あれ」とは、毎月社内に補充しているコーヒーとお菓子の話です。田中社長はずっと自腹で買っていたそうで、経費として処理できると聞いて思わず苦笑いしていました。
実はこういうケース、珍しくないんです。福利厚生費は、うまく活用すれば年間50万円以上の節税につながることもあります。今日はその具体的な中身をお話しします。
「全員が対象」であることが大前提
まず最初に、福利厚生費として認められるための大原則をひとつ押さえておいてください。
それは、**「会社の全従業員が対象であること」**です。
特定の役員だけ、あるいは仲の良い社員だけに対する支出は、福利厚生費ではなく給与や交際費とみなされるリスクがあります。「全員に平等に」という視点が、税務上のトラブルを避けるうえで非常に重要です。この前提を頭に入れたうえで、以下の5つを見ていきましょう。
意外と知られていない、経費になる5つの支出
1. 社員の人間ドック代
健康診断の費用は、法定の定期健康診断だけでなく、人間ドックも一定の条件のもとで福利厚生費として処理できます。田中社長の会社では、全社員を対象に年1回の人間ドックを導入したことで、この費用をまるっと損金に計上できるようになりました。
社員の健康管理は義務でもありますし、採用面でのアピールにもなる。節税になって一石二鳥です。
2. 社内のコーヒー・お菓子代
冒頭でも触れた「あれ」がこちらです。休憩室に置くコーヒーや軽食のお菓子は、全社員が利用できる環境であれば福利厚生費として認められます。
月に5,000円でも、年間で6万円。積み重ねると意外と大きな金額になります。「どうせ買うなら、きちんと経費として処理しましょう」と田中社長の税理士が一言添えていたそうです。
3. 忘年会・社員旅行の費用
社員の親睦を目的とした忘年会や新年会、社員旅行の費用も福利厚生費に該当します。ただし、社員旅行については「4泊5日以内」「全体の50%以上が参加」といった目安があり、あまりに豪華すぎる旅行は給与扱いになる可能性も。常識的な範囲で計画するのがポイントです。
4. 資格取得のための書籍・受験料
業務に関連する資格の取得を会社がサポートする場合、その書籍代や受験料は研修費や福利厚生費として処理できます。「社員のスキルアップ支援」という文脈で整理するとわかりやすいでしょう。
たとえば、製造現場に関係する技術系の資格、営業担当のFPや簿記の受験料なども対象になりえます。会社の業務との関連性をきちんと説明できることが大切です。
5. 社員全員へのお中元・お歳暮
これも見落とされがちですが、社員全員に均等に配るお中元やお歳暮は福利厚生費として扱えます。「一部の人だけ」はNGですが、全員対象であれば問題ありません。
お歳暮シーズンになると、社員への感謝を込めて食品ギフトを配る会社も多いですよね。それが経費になると聞いたら、少し気持ちが楽になりませんか。
実際の節税効果はどれくらい?
田中社長の場合、これら5つの支出を合わせると年間で約50万円分が福利厚生費として認められるようになりました。
法人税率を約23%として計算すると、50万円の損金計上で約11万5千円の節税効果です。決して小さくない金額ですよね。
しかも、これらはどれも「社員のために使うお金」です。節税のためだけに無理やり作り出した支出ではなく、もともと会社が負担していた(あるいは負担すべき)費用をきちんと整理しただけ。それが節税につながるというのが、福利厚生費の面白いところです。
注意点:「条件を満たすこと」が絶対条件
ここまで読んで「うちも全部やろう!」と思った方、少し待ってください。
福利厚生費には、項目ごとに細かい条件や限度額があります。たとえば食事補助には従業員負担額の基準があったり、旅行には参加率の要件があったり。「なんでも経費になる」わけではなく、あくまでも適切な範囲での運用が求められます。
税務調査で否認されてしまっては元も子もないので、実際に導入する前に必ず顧問税理士に確認することを強くおすすめします。
まだ福利厚生費を「なんとなく」で処理しているなら、今期中に一度、税理士と一緒に棚卸ししてみてください。田中社長のように、「え、これも経費になるの?」という発見がきっとあるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。