先日、製造業を営む社長からこんな一言をいただきました。

「ふるさと納税って、会社でもできるんですか?」

そうなんです。ふるさと納税は個人だけの特権だと思っていませんか?実は法人向けにも同じような制度があって、しかも節税効果は個人版をはるかに上回るんです。今日はその「企業版ふるさと納税」について、具体的な数字とともにお話しします。

100万円の寄付で、手元に残る負担がたった10万円

結論からお伝えします。企業版ふるさと納税を使うと、寄付額の最大約90%が法人税・法人住民税・法人事業税から控除されます。つまり100万円を寄付した場合、実質的な自己負担は約10万円で済む計算になります。

個人版のふるさと納税は「2,000円の自己負担で返礼品がもらえる」と話題になりましたが、企業版はスケールが違います。返礼品こそありませんが、節税インパクトは桁違いです。

年商3億円規模の中小企業であれば、毎期それなりの法人税を納めているはずです。その一部を「地域への寄付」という形に変えるだけで、これだけの効果が生まれるのです。

なぜそんなに控除されるのか

企業版ふるさと納税の正式名称は「地方創生応援税制」といいます。国が地方自治体への民間資金の流入を促進するために設けた制度で、2016年にスタートし、2020年の改正で控除率が大幅に拡充されました。

控除の仕組みを簡単に説明すると、寄付額のうちまず約33%が損金算入(費用計上)され、さらに残りの約67%が税額から直接差し引かれます。この二段階の恩恵が組み合わさることで、合計約90%もの控除が実現するわけです。

通常の寄付金は損金算入に上限があり、節税効果が限定的です。この制度は特別措置として、通常の損金算入枠とは別枠で扱われる点が大きなポイントです。

実際にどうやって使うのか

手続き自体は、思っているほど複雑ではありません。大きな流れとしては次の3ステップです。

まず、寄付先となる自治体と「対象事業」を選びます。企業版ふるさと納税は、自治体が国の認定を受けた「地方創生プロジェクト」に対してのみ寄付できる制度です。観光振興、地域産業の育成、移住促進など、さまざまなテーマの事業が全国の自治体で公募されています。

次に、自治体に申し込みを行い、寄付金を振り込みます。その後、自治体から「受領証明書」が発行されるので、それをもとに確定申告(法人税申告)で控除を申請するだけです。

ひとつ注意したいのは、寄付できる金額の下限が10万円以上と定められていること。また、寄付した自治体から経済的な見返り(返礼品や契約上の優遇など)を受けると制度の適用外になるので、そこだけ気をつけてください。

節税だけじゃない、意外な副産物

企業版ふるさと納税に取り組んだ経営者から聞いてよかったと言われるのが、ブランドイメージの向上です。

自治体のウェブサイトや広報誌に「協力企業」として掲載されることが多く、地域との関係性が深まります。採用活動でのアピールポイントになったり、取引先からの印象が良くなったりという声も実際に聞きます。

CSRやSDGsへの取り組みとして社内外に発信できるのも、数字に表れないメリットです。節税しながら社会貢献の実績も積める、一石二鳥の制度といえます。

向いている会社・向いていない会社

もちろん、すべての法人に無条件でおすすめできるわけではありません。

控除は「法人税等から差し引く」仕組みなので、そもそも納税額が少ない赤字企業や、課税所得がほとんどない会社には効果が薄くなります。利益が出ていて、毎年それなりの法人税を払っている会社ほど恩恵を受けやすい制度です。

また、寄付先の事業内容や自治体との相性も確認が必要です。どんな事業に寄付するかは、会社のイメージにも関わってきます。節税だけを目的に選ぶのではなく、自社の理念や事業と多少なりともつながりのあるプロジェクトを選ぶと、社内外への説明もしやすくなります。

決算を迎える前に、一度検討する価値あり

企業版ふるさと納税は、決算期が近づいてから慌てて動くと、手続きが間に合わないケースもあります。寄付の受け付け状況は自治体ごとに異なりますし、年度末に向けて枠が埋まることもあるためです。

「今期は利益が出そうだ」と感じた時点で、早めに顧問税理士や自治体の担当窓口に相談しておくのがベストです。国の「地方創生推進機構」のポータルサイトでは、寄付を受け付けている事業を一覧で検索できるので、まずはどんなプロジェクトがあるか眺めてみるだけでも面白いですよ。

法人税対策の選択肢として、企業版ふるさと納税をぜひ頭の片隅に置いておいてください。100万円の寄付で90万円の節税効果があるなら、検討しない理由はないはずです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。